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2004年10月31日日曜日 おいしい久木野家庭料理大集合 (はる食日記)

10月31日(日)
雨のち晴れ。水俣。昨日は少し冷え込んだ。起きるとすでに同行の参加者によって火はおこされていた。 味噌汁と目刺しや漬物をAさんに用意していただき、昨日の残りご飯やおかず、おでんなどでご飯をいただく。当たり前だがお茶がおいしい。

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1031-2 午前中は、おいしい久木野家庭料理大集合に参加。今回で3回目となる催しで、 今回は食の文化祭の一企画として開かれた。久木野地区の各家庭から料理を1品(以上)もちより、ずらりと並べて、見て、話して、 最後に試食をするという楽しい文化祭である。会場となった久木野の愛林館には、雨の中、 濡れないように体の前に包みを抱えて女性たちが次々と入ってくる。まわりの料理を見回し、少し照れくさい様 子で受付をすませ、 用意されたシートに、料理名やレシピ、一言コメントなどを書いていく。スタッフが、1作品ずつきれいに写真をとっていく。 そうしてラップにくるみ、みんなが揃うのをじっと待つのだ。お皿もそれぞれ、飾り付けもそれぞれであるが、ずらりと並んでみると、 これがなんともいえず色とりどりで、壮観である。なにより、見て回る人たちの目が輝く。私の目も輝く。 しばらくはみんなで料理を眺める。どれを食べようか、というだけではない。料理情報の交換会でもある。
「これなんね」「レモングラスのお茶よ」「レモンとはちがうとね」「ハーブの一種で冬を越すのが大変だけど、すぐに株が増えて育つの。 レモンと同じように酸っぱくて香りがあって、お茶やお風呂にもいいのよ」
「この団子は私が作ったとです」「おいしそう」「あっちのが、上手かとよ」「いえいえ。どっちも食べます」
「これは、ゴーヤの酢漬け、こっちは、みそ漬け、あれは梅しそ漬け。いろいろでくっとですよ」
シートに書いてあるコメントもなかなか楽しい。みんなに一番受けていたのは、行きつけのイタリアンレストランのレシピでつくった納豆ピザ。 「チーズを忘れました。すんません」とあったが、後で食べたところチーズがなくてもおいしかった。
「私が小さい頃、おやつに。母がつくってくれた」というねったぼ。
「子どもの頃よく母がつくってくれたおやつです」といううしの舌だんご。
「ゲートボールに行くときに作って食べてもらいます」というむらさき芋のコロッケ。
「下払いの時とか仕事のときのおやつ。ゲートボールの時も」というかぼちゃ団子。
もちろん煮しめも何種類と出ている。自家製のこんにゃく、地魚の南蛮漬け、赤飯におこわ、巻きずし、チャーハンもある。パエリアもある。 伝統料理も、最新料理も、創作料理もある。
試食である。作った人、見に来た人、食べに来た人が一斉に、お目当ての料理に群がる。もちろん、試食である。たくさんとってはだめよ、 みんなに少しずつと言ってはいても、同じ傾向の料理を食べ比べてみたり、つまんでみたりしているとあっという間にお腹が一杯になる。
それでも、モニターである我々は、「次もあります」という声に、少しだけ抑制したのだ。たぶん。
ところが、「次」の予定であったところから連絡が入る。「もう料理がなくなった」かの地でも作った人、 食べに来た人たちの目の色が変わったのであろう。

 そこで、ちょっと予定を変更し、葛渡地区の国道3号線添いにある水俣市東部地区の手作り農産物直売所「かっさい市場」 を訪ねることとした。ちょうオープン1周年を祝う収穫祭が行われており、焼き芋や毛芋、だご汁や新米のおにぎり、カレーの販売、新米すくい取り、 新茶の試飲、稲わら細工教室などが行われ、踊りや演奏なども行われていた。そんなに大きくない直売所だが、たくさんの人が訪れている。直売所は、 新米、地場産のレモンや唐辛子、大根、かぼちゃ、冬瓜、瓜、花、それに、水俣のいりこやあおさなどが売られていて、 まだ昼というのにほとんど売り切れている。
私が水俣に行くようになって話には聞くが、いまだ出会っていないのが「川がね」である。今が旬ということで、楽しみにしていたのだが、 ここでもまた「旬の味川がね、いよいよ登場」の張り紙だけを残してすべて売り切れていた。また来いということか。

午後は時間があいたので、参加者とともに、水俣市の物産館「まつぼっくり」を訪ね、その後、湯の鶴温泉に行くこととした。 しばし温泉を楽しんだ上で、湯の鶴のある水俣出水線をぶらぶらと歩く。
竹細工をしている方がいた。柏木さんという。なかなかの高齢である。座りっぷりも堂に入ったもので、広いとは言えない作業場で、 長い竹を器用に加工していく。「これまで作ったものはみんな売り物で手元に残っていないから、 作ったことのある竹細工をひとつずつでも作り直しておいておきたいんだが」「Iさんが水俣に来たので、この前は誘われて一緒に竹を切りに行った」 いろんな話をしていただく。話す間も手が動いている。職人である。
もうひとり、今度は藁細工をしていた方を見かけた。こちらも柏木さんという。元大工さんで、大工も藁細工も独学で学んだという。藁細工は、 羽釜を置く台や、馬のくつ、牛のくつという、馬や牛を山に登らせるときにはかせたもの、 海で作業するのに地下足袋の上からつけるわらじのようなものなどが飾られている。
彼らの技が消えていかないことを願うばかりである。

1031-3夜は、水俣市内のイタリア料理店で会食。アンチョビをオリーブオイルに漬けて、それを熱し、 生の野菜を温めて食べる。地物野菜のマリネ。納豆を漬物やトマト、長芋、きゅうり、生卵とセルクルでまとめ崩して混ぜていただくもの。 カルパッチョ。切り干し大根と豆を炒めたもの。切り干し大根とベーコンとしそのパスタ。鶏と葱のソテーにバルサミコをかけたもの。 いりこと小豆の玄米リゾット。いずれも地物野菜や魚、保存食などをうまく利用し、それをイタリア料理の技法でうまくまとめている。 同行したイタリア人(スローフード協会の副会長である)も喜んでいた。ここの主人は、 彼が行くレストランのシェフのところで修行したのである。そういう出会いも多いのが水俣のよさだ。

宿泊は、Aさんのところに戻る。もちろん、泊まるだけではない。焼酎とみかんと紅茶とおでんと和菓子と…焼き卵。 卵にちょっとだけ傷を付け、濡れ新聞紙にくるんで囲炉裏の灰の中に埋めておくのだ。新聞紙がちょうど乾いた頃。中は半熟のおいしい卵が完成する。

食:8時、ひすいご飯、味噌汁、目刺し、おでん、漬物など。
食:11時半、試食。稲荷寿司、赤飯、かぼちゃ団子、いきなり団子、漬物各種、煮しめ、そのほか。
食:18時、オイルフォンデュ、地物野菜のマリネ、納豆のセルクル、カルパッチョ、切り干し大根と豆のソテー、パスタ、鶏と葱のバルサミコ、 いりこと小豆の玄米リゾット、ワイン。

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[はる食日記 |2004年10月31日 ]

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