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いまさら聞けない勉強室&ワード集



合成洗剤と石けんの違い


【洗剤の定義】

生活のなかで、石けんや洗剤を使わない日は1日もないでしょう。手を洗う、顔を洗う、歯を磨く、身体を洗う、髪を洗う、食器を洗う、洗濯する、車を洗う…。水だけでなく、石けんや洗剤を使います。スーパーなどに行くと、台所用、洗濯用、入浴用、歯磨き、シャンプーなど、いろんな種類の洗剤が棚にずらりと並んでいます。この「洗剤」には、大きく分けて「石けん」と「合成洗剤」の2種類があります。
もちろん、固体が「石けん」で、液体が「合成洗剤」というのは間違いです。
洗剤の主成分は、界面活性剤です。それに、いろんな目的で加えられた添加物「助剤」が入っています。「石けん」と「合成洗剤」では、界面活性剤の性質が大きく違います。

【合成洗剤と石けんの違い】

石けん
主成分は、脂肪酸ナトリウム(固形)か脂肪酸カリウム(液体)です。助剤としては、一般に香料、着色料、金属イオン封鎖剤(硬水軟化剤)が使われます。洗濯用粉石けんを作るために炭酸塩を使うことがあります。
合成洗剤
主成分は、陰イオン系界面活性剤のLASやASやAOS、非イオン系界面活性剤のAEやAPEです。助剤は、増量剤や防湿剤、蛍光増白剤や香料など。

【洗剤の問題】

人体への影響
石けんは、羊の肉を焼くときに落ちた脂が灰と混ざって軟石けんとなり、それで洗いものをするときれいに落ちたことから発見され、使われてはじめたそうです。長い歴史の中で、生活の中から生まれたものです。
長い歴史がある石けんについては、通常の使用では人体に対する影響がほとんどないと考えられています。ただ、市販の石けんによく使われる助剤のエデト酸塩には、皮膚障害や催奇形性などの疑いがもたれています。無添加のものを使いたいですね。
合成洗剤は、石油製品のひとつとして生まれ、界面活性剤を化学合成によって作り上げています。つまり、自然状態ではあまり存在しない物質です。次々の新しい物質が生み出され、常に「安全」という宣伝の元で販売されてきましたが、過去には誤って一口飲んだために死亡したり、皮膚障害が起こったりということがありました。そのたびに、主に使われる物質が変わりましたが、毒性が「低く」なったと言っても、まだまだです。新たに開発された化学物質の場合、どんな危険性があるのか、長期的に調べないと分からないため、今安全だと言われても、後に危険であったということがよくあります。今流通されているものでも、皮膚障害やたんぱく質の変性作用、肝臓障害や催奇形性などに不安があります。もちろん、毒性の強弱はありますが、特にLAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)の毒性は非常に強いと言われています。

環境への影響
石けんの環境に対する影響は、それほど強くありません。なぜなら、自然界にある成分であり、微生物などによる分解を受けるからです。
合成洗剤の場合は、種類によって違います。最近では生分解性の高い合成洗剤も開発されていますが、総じて石けんに比べ分解しにくく、川や海の生物、生態系も壊す力があります。だから、全国の漁業組合、とくに女性たちが海を汚さないためにも自分たちから石けんを使おうという運動をしています。


【「天然原料」だからと言っても】

「パームやしから作った」「とうもろこしから作った」「100%植物原料」と天然原料であることをうたい文句にして、あたかも「環境に優しく安全」なように見せかけている合成洗剤製品がたくさんあります。
もともと、合成洗剤は石油原料をベースに作られてきました。しかし、合成洗剤への批判が高まるにつれ、石けんと同じ原料であるパームやし油などを使うようになったのです。
でも、成分を分解して化学的に合成する「合成洗剤」であることには変わりありません。原材料は同じでも、まったく石けんとは違うのです。中身は、石油から作った合成洗剤と同じと言えます。
さらに悪いことに、パームやしは、フィリピン、インドネシアなどでプランテーション栽培されています。安い賃金と農薬を直接手で扱うなどの劣悪な労働でアジアの人々を苦しめ、環境を汚染するパームやしプランテーションは、最近増えつつあります。インドネシアの大火事は、山焼きが原因とされていますが、昔ながらの食べるための焼き畑ではなく、このパームやしを植えるための山焼きが広範囲に行われています。しかも、パームやしは油をとるためのやしです。つまり、油分がとても多いのです。火がつくと燃えやすくなっています。「地球にやさしい」天然原料合成洗剤の実態です。

【石けんを使おう】

市販されている歯磨き粉やシャンプーなどもほとんどが合成洗剤です。もちろん、洗濯用洗剤も食器洗い洗剤も合成洗剤です。でも、今はあちこちで、石けんベースの歯磨き粉やシャンプー、洗濯用洗剤などを販売しています。小さなメーカーばかりなので、あまり広告は見かけませんが、どうぞ、石けん製品を選んで買ってください。

参考文献
『暮らしのエコ・チェックQ&A』渡辺雄二著(ほんの木)『台所用品の不安とつきあう法』増尾清著(農文協)など


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