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いまさら聞けない勉強室&ワード集



フェアトレード


【食料輸入大国日本】

 純食料輸入国で世界一の国、日本。
 世界の中で唯一、食料生産の努力を放棄した「豊かな国」です。
 1994年は、カロリー自給率46%、穀物(食用+飼料用)自給率33%。
 いわゆる先進国と言われる中でもっとも低い数字です。1970年に日本よりカロリー自給率では低かった島国・イギリスは、その後の努力によって70%を越す自給率を達成しています。
 この20年、日本の自給率はひたすら下がり続けています。
 米、麦、大豆、とうもろこし、そば、肉、魚、野菜、果物、加工食品。あらゆるものが世界中から日本に届いています。
 純和食を食べても、その自給率は、0%に近いということも現実にあるのです。

【輸出した国が失うもの】

 食糧を輸出する側を見てみましょう。主な輸出国はアメリカですが、アジアも増えています。輸出すると、もちろん外貨が得られます。それと引き替えに失うものは輸出した食べものだけではありません。
 アメリカでは、大規模な土壌流出や耕作のし過ぎによる砂漠のような耕作放棄地ができたり、地下水の汲み上げによる水不足、地盤沈下などが起こっています。
 アジアでは、森林伐採によって雨水が貯まらなくなり、干ばつが起こったり、エビの養殖のために海岸のマングローブ林が破壊され、さらに海が汚染されています。
 また、輸出作物は、同じ場所で大規模なプランテーションを作り、連作されることが多いため、土壌が疲れ、大量の化学肥料と農薬を必要とします。
 特にアジアなどでは、安い人件費を背景に、人々に農薬の対策をとらないまま使用させ、農薬による健康被害が多発しています。

 作れる土地や豊穣な海で、余った分だけを輸出するだけなら、このようなことにはならないでしょう。輸出して外貨を得る。そのことだけが目的となったとき、輸出国は、水を失い、大地を失い、人々を失っていきます。

【輸入する国が失うもの】

 輸入する国、日本。私たちは、大量の食料に包まれて生きています。その一方で、「安い」輸入食料に押され、国内の農業・漁業・畜産業にたずさわる生産者は年々激減しています。農地は放棄され、後継者は不足します。
 水と緑と気候に恵まれ、作れるはずの国は、ますます、作る力を失っていきます。 そして、過剰な有機物が日本に集まっています。
 年間の生ゴミの量だけで1千万トン。実に国内の米生産量と肩を並べる食べ残しがあり、私たちの糞尿とともに、土地に、川に、海に流されています。そして、微生物も分解が追いつかず、海や大地を汚染しています。
 5年後、10年後、世界の人口がますます増え、環境が悪化していく中で、生産者と耕作地を失った日本に輸出を続けてくれる国があるでしょうか。

【フェアトレードしよう】

 環境白書平成8年版からの引用です。
「いわゆる『フェア・トレード(公正貿易)』は、途上国の生産者と先進国の消費者を結び、貿易に伴う環境への負荷が生じていないこと、生産者が正当な利益を得ていること等の通常の貿易ではうかがいしれない部分を保証する貿易形態であり、扱われる産品の素性が知られている点では、国際的な産直という側面を持つ(中略)我が国でも市民団体等を通じてバナナその他フェア・トレード商品が扱われるようになっており、最近では、マングローブ林の破壊や地下水のくみ上げ等の面で環境に悪影響を与える場合が見られる集約型の養殖場で生産されるエビに対して、伝統的な粗放型の養殖池のエビをフェア・トレードで輸入する動きもある」という記述がありました。
 国内生産ですべての食料がまかなえれば、それに越したことはないのですが、今すぐにそれを達成するのはなかなか難しいものがあります。
 また、たとえば、生産力のある米を海外に輸出し、見合う分だけ輸入する節度があれば、食料の輸出入もよいかと思いますが、そのような状態ではありません。
 であるならば、新しい食料輸入のあり方を、過渡期的にきちんとつくることが現実的です。フェアトレードとかグリーントレード、草の根貿易と呼ばれるものがそれです。
 ・国内の生産力をそぐような輸入ではないこと。
 ・輸入先に環境負荷を与えないこと。
 ・輸入先のすべての過程において、搾取がなく、正当な利益を得ていること。
 ・生産から輸入、消費までの過程で、相互に交流があり、商品の適正な価値を見いだせること。
 などが、挙げられると思います。
 日本では、世界的にも知られているフィリピンの民衆組織との間での無農薬・無ポストハーベスト農薬バナナの貿易があります。
 このような貿易を通して、視野を広げ、世界的な環境や人権、食糧問題と、自分が住んでいる地域の問題を結びつけていくことができると思います。

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