食品添加物とは
【保存と調理と食べもの】
人間はいろんなものを食べます。しかも、大半は調理して食べています。水で洗うことを覚え、火を手に入れることで、安全でしかもおいしく食べることができるようになりました。さらに、一度にとれた食べものを長く食べ続けられるように保存することを覚えました。食べものは傷み、腐ります。だから、できるだけ長く保存するためには、いろんな工夫をしなければなりませんでした。
干物、塩漬け、酢漬け、くん製、発酵、瓶詰、缶詰、クッキーや乾パン。
食卓で見かけるこれらの加工食品は、おいしく、長く持たせようという知恵の中から生まれました。
そんな知恵の中に、食べものを作るための補助物質として、豆腐に使う「ニガリ」や麺に使う「かんすい」などが登場しました。さらに、食べものに香りや色を添えるハーブや、防腐や殺菌のために使うスパイスなどが使われるようになりました。
【大量生産の時代】
ところが、大量に生産し、遠くまで流通させる時代になると、食品に対する考え方が変わってきました。できるだけ均一に、しかも、長く保存でき、見栄えがよくなければならないという風潮になったのです。食品メーカーは競争をはじめ、より安いコストで、より見栄えのよい、消費者が買いたくなるようなものを開発するようになります。その過程で、時間のかかる作業は減らされ、化学物質で置き換えられてきました。食品添加物全盛の時代が到来したのです。
だしをとるのはコストも、時間もかかります。化学調味料ならば、工場で大量に安く生産され、しかもうまみだけを取り出してあります。味の失敗もありません。
加熱したり、加工することで、素材本来の色や香りが消えることがあります。それを隠し、いかにもおいしそうなにおいや色にするために、香料や着色料はとても便利です。わざわざ最初に漂白して、それから着色することもあります。これならば、安くて品質の悪い素材を使っても分かりませんものね。
さらに、遠くに運ぶには、傷んだり、腐っては困ります。長く棚に置いてもかびが生えたりしないように、保存料や殺菌料は欠かせません。
そうやって、食品添加物が大手をふって歩き出し、伝統的な加工方法は、時間短縮とコスト削減の海に沈んでいったのです。
【食品添加物と食生活の変化】
今の日本人は、平均して1日あたり10g以上、年間約4kgの食品添加物を食べていると言われています。しかし、素材購入・手作り料理中心の家庭と、外食・惣菜・加工食品中心の家庭では、食品添加物の摂取量が大きく違うと思います。食品添加物をわざわざ買い揃え、料理に使っている家庭があるとは思えません。せいぜい、味の素を買うぐらいでしょう。食品添加物は、主に加工食品に使われています。なかには、輸入果物(保存料、殺菌料)や煮干し(酸化防止剤)、味噌(保存料他)というように、意外なものにまで使われています。味噌に保存料というあたりは、冗談のような話ですが、スーパーなどで売っている味噌の表示を見ると、あるんですよ、ときどき。
【現代の食品添加物】
現在使われている食品添加物は、化学的に合成されたものと天然物質からとられたものがあります。これらは、
という目的に分類されます。
- 食品を製造する
- 保存する
- 外観や風味を良くする
食品を製造する際に使うのが、調味料・甘味料・酸味料・乳化剤・膨張剤・糊料・小麦粉改良剤など
食品の保存に使うのが、保存料・殺菌料・防かび剤・酸化防止剤など
外観や風味をよくするために使うのが、着香料・着色料・発色剤・漂白剤などです。
【食品添加物の問題】
「日の当たるところに置いていてもいつまでも腐らない」魚肉ソーセージは、戦後のタンパク質不足を補う貴重なタンパク質であったと言われています。この「いつまでも腐らなく」させたのが殺菌料AF2でした。しかし、その後の研究で、遺伝子を変異させる恐れがわかり、反対運動によって1974年に使用が禁止されました。その間、日本人はAF2を食べ続けてきました。
森永ヒ素ミルク中毒事件、カネミ油症事件などの食品加工にまつわる事件。最近では、食肉にニコチン酸などを不法に使い見た目をきれいに見せかける事件、発がん性が認められるとして一度は使用禁止が決定されかけた酸化防止剤のBHAが海外の圧力によって今も添加物として認められるなどの事例もあります。食品添加物には、個々、毒性の少ないもの、高いものなどがありますが、多かれ少なかれ、リスクを背負っていることは間違いありません。
【使わない食生活を】
食べものは、腐るものです。傷むものです。
製造上便利だから、とか、大量生産にむいているからとか、流通上便利だからという理由で、安易に食品添加物に頼っていると、古い食べものを新しく見せかけたり、水増しされたハム・ソーセージのようなものを生み出したり、気づいた時には危険な食品添加物を長期にわたり摂り続けていたりということを起こしかねません。
多くの添加物は不要であること、そして、食べものは本来腐るものということを前提として、安易な添加物使用を行わない社会にしていくことが必要だと思います。
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