秋に読みたい本の紹介 その1
食べものをつくること、たべることは、地球環境から地域の自然や経済、社会、ひとりひとりの人の健康や生き方と深くつながっています。 たとえば、お米と日本人の関係を考えてみましょう。日本列島は東アジアのモンスーン気候にあります。温暖多雨な気候から水田でのお米づくりが食べもの生産の中心になりました。そして、お米は、食習慣だけでなく、生活習慣や社会、経済のあり方など「日本社会」「日本文化」の奥底をつくっています。 ところが、今、日本人の米の消費量が年々減っています。あり得ないことですがもし仮に日本人がまったく米を食べないようになったとしましょう。すると、日本の水田は米をつくらない限りいらなくなります。水田のある風景はなくなるでしょうから、日本の風土風景は大きく変わります。また、食生活も変わりますから、食卓のあり方まで変わるでしょう。地域生活、社会、さらに自然環境まで大きく変化することになります。これは極端な例ですが、農業(一次産業)と食、そして、環境問題が相互に大きな関係があることはおわかりいただけると思います。 農と食の環境フォーラムは、この農業と食と環境の関わりを、いろいろな角度から見て、できることを考えています。 今回は、そんな「いろいろな角度」を持つのに役立ち、読みやすい、分かりやすい本をご紹介します。夏から秋にかけて、ゆっくりと読んでみませんか。 『知っていますか 子どもたちの食卓』 著者:足立己幸、NHK子どもの食卓プロジェクト 発行:2000年2月 出版:NHK出版(日本放送出版協会) 価格:1500円+税 副題は「食生活からからだと心がみえる」。小学校高学年に朝食と夕食、いつ、だれと、何を、どんな気持ちで食べたのか、絵に描いてもらいました。そこに描かれた現代の食卓は、正直なところ想像を絶するものでした。荒れる、キレル、分からないというまえに、今、日常の食がどうなっているか、知ることからはじめませんか。日本は飽食と言われますが、子どもたちの食は豊かだと言えないかも知れません。 『日本人の清潔がアブナイ!』 著者:藤田紘一郎 発行:2000年7月 出版:小学館 価格:1600円+税 『笑うカイチュウ』で有名な寄生虫博士による清潔・うんちエッセイ。きれい好き、清潔好きな日本人、そんなに微生物・菌を嫌っていると、自分たちが滅んでしまうよ、と軽妙な文章で警告しています。体の表面にも、胃腸にも菌はたっぷりいます。なくすよりもいい共生をしませんか。 『発酵食品礼讃』 著者:小泉武夫 発行:1999年11月 出版:文春新書 価格:690円+税 発酵は細菌やカビを人間が利用する技術です。土づくり、食べものづくり、健康づくり、環境保全に役立てられる発酵は学べば学ぶほど奥が深く、おもしろく、わくわくし、そして、おいしいのです。本書は、古今東西の発酵食品の紹介を通じて、発酵の魅力に迫っています。細菌やカビの礼讃書、かな。 『森が消えれば海も死ぬ』 著者:松永勝彦 発行:1993年7月 出版:講談社(ブルーバックス) 価格:740円+税 海のいのちは森が育てている。それはお題目ではないのです。本当に森の木と微生物が生みだす物質が、海の微生物を育て、海の生物たちを育てていることを、長年の研究の末に明らかにしました。森をこわし、川を三面張りにし、護岸工事で沢水を防いだ結果が、海の死だった。だから、漁民が森に木を植えているのです。森から川、田畑、マチ、沿岸、海までを考えるのに欠かせない一冊です。 『農から環境を考える』 著者:原剛 発行:2001年5月 出版:集英社新書 価格:660円+税 地球温暖化、ダイオキシン汚染、巨大公共事業、人口爆発、食料危機…課題の多い21世紀に農業と私たちの生活はどうなるのか、どうすればいいのか、様々なデータとインタビューを通じて、新しい農業、生活のあり方を提案しています。 |
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