ちれぢれ草「生活編4」 2002.5.15
池田久子

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〜〜〜〜  ちれぢれ草 〜〜〜〜 16巻  「生活編 4」 2002.5.15
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「 ちれぢれ草」は、チリ共和国に青年海外協力隊の村落開発普及員として
赴任しているわたくしが、日本から17000キロ離れた任国チリを少しでも知
っていただきたく、日々雑感を徒然なるままに綴ってお送りさせて頂きます。
ご不要の方はご遠慮なくそのまま返信してください。 送信者:池田久子
 
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生活編4「スタイルとファッション」

先日はこちらでも母の日でした。数週間前からテレビでのデパートや商品の
宣伝、町のウインドウも母の日ターゲットの宣伝が多く女性の服、バッグなど
が綺麗にディスプレイされてました。ふと思えばこちらの人のファッションとか
容姿について書いてなかったなと思って、今日はそんな話。

チリにくる前「チリは美男美女が多い」と聞き、私含め隊員みな結構ワクワク
していたけれど、おおかた職場や田舎で出会う男性らはお腹がでてて太いし
背は高くないし、顔もクドーイ!と女性隊員はがっかり。はっと振り向いてしま
うほどスラリとしてかっこいいと思う男性はまず高校生かデパートの店員の
オニイさん。それ以外は若くても30歳までいかずして太ったりオジサン臭いかんじ。
チリ上空はオゾンホールがぽっかり空いて紫外線が強いらしくそのせいか、
若い人でも結構目じりの皺が多く、どうも老け顔。
 それと首都のサンチアゴは金髪碧眼の「ヨーロッパ系すっきり顔」のおしゃれ
で痩せた素敵な人も多いけど田舎は「スペイン系くどい顔」の体型はしっかり
太い人が多い感じ。別にどっちに価値があるという話ではなくって美醜の感覚
は人それぞれで、私にとってはちょっと勘弁して、というほどクドイ顔の人を
「彼、素敵よ」なんて言ってる同僚もいるのですからホント共通の価値はあり
ません。
それでも、色が白く背が高く金髪碧眼がもてはやされる傾向はあり、特に先住
民的なモンゴロイド系の顔や色の黒い人、アジア系への差別は結構あるように
感じます。

 ファッションについては、サンチアゴでは世界の流行と何ら変わりないのですが、
田舎はスペインの田舎に起源を持つような男性のつばの広い帽子、冬はポンチョや
伝統的なマントの衣装などをごくあたりまえに見ます。農家の会合に来るチレーノ
(チリ人男性)たちはだいたいブルージーンズに白のアイロンのかかったシャツ、冬
ならその上に柄物のセーター、ジャンバーですが、革靴、つばの広い帽子は基本の
ようです。もちろん地域によっては貧しい象徴と言われる古タイヤで作ったサンダル
でよれよれの汚れたジーンズでやってくる人もいますが。チレーナ(女性)も会合に
は結構めかしこんできます。田舎ほどロングスカートに長い髪、年配女性はスカート
の人が多く、都会的な人や若い人ほどズボンが多いような感じです。男性に帽子が
欠かせないのに、女性で帽子をかぶっている人はまずみかけません。

若い女の子らの典型的な格好は少し巻き毛の長い黒髪に大きなピアス、夏は上半身
は露出度の高いタンクトップ、おしりや腿にピッタリしていて、すそ広がりのブーツ
カットのジーンズに厚底サンダル。晩秋の今はタートルセーターかセーターに短い丈
のデニムジャケット、もしくはデニム地のロングコート、ズボンはやっぱりすそ広
がり。とにかく体の線を強調した服を選んで着る、これは日本の女の子よりも熱心
かもしれませんが、スカート、ミニスカートというのは学生以外まずいません。
ところで驚いたことにここでもいわゆる「コギャル」的なルーズソックスは中高校生
に流行っているのです。ちなみに色は紺で、ひざ下から靴までわざとたるませて
履いています。これが秋冬になるとタイツを履き、その上に同系色の靴下をたるま
せて、靴にかぶせるようにしています。真冬に「生足」というのはさすがにやってま
せんが、この流行は日本だけかと思ったのに、どこが起源なんでしょう?
ほかの国の女子学生はどうなのかしら?

さて、若い男性の格好は日本とほとんど同じですが、日本でよく見かける若いお兄
ちゃんの夏の短パン、ジャージの上下、ツッカケサンダルという姿はまったく見ま
せん。平均して見れば老若男女、それなりに結構おしゃれで服に気を使っている
人が日本人よりも多いような感じがします。

しかし、全身スキのないほどおしゃれな人は都会にはいるけれど、ジーンズのウエ
ストにお腹の脂肪がでんと醜く乗っかってたり、タンクトップから下着がはみでても
へっちゃらという人もしっかりいます。隊員同士集まった時、「どーしてあんなにウ
エストのくびれのない体型が多いか」「どうしてビヤ樽体型でピチピチの服を着る
のか」「どうして自分もしっかり太いのに他人のことを「あのおでぶさん」などと
平気で言えるのか」などと話したこともありました。
結果として、体重計を持っていない、全身を写す鏡がない、町のウインドーで自分
の姿を見ることがない、などと推測したのですが・・・。
看護婦の隊員が嘆いていたのは日本の理想的な標準体重の簡単な出し方の計
算式、身長マイナス100かける0.9では、ほとんどの人がオーバーになってしま
うので指標にならないそうです。肥満検査をして「太りすぎですよ」と忠告したら
「ええ?私ってそんなに太ってるの?」とびっくりされて、その自覚のない反応に
看護婦隊員のほうがびっくりしたとか。

それを納得したのは家のマリアおばさんと話していたとき「チャコは体重これくらい
でしょ」と言われたのが身長マイナス100くらいだったのでその数字にちょっと気
を悪くし「もっと軽いよ、なにキロだよ」と言ったら「そんなの嘘でしょうー」
「ほんとだよ」「そんな、痩せすぎだわよ」と言われる始末。
同僚にも計算式を教えたら「えー、僕はほんとは何キロでなきゃいけないの?」と
びっくりされたことも。

砂糖や油のとりすぎもあるとは思うけど体質的なものもあるのか、やはり太りすぎ
の人が多すぎるし、当然高血圧、糖尿病、心臓病も多いようです。
この私でさえこちらでは「若く見える、痩せてる」と誉められているのだから日本に
帰ったときのギャップが怖い。

でも、でも、やーっぱり毎日太い人ばっかり見てるとすごく重量感があって、目が
お腹の脂肪にくぎ付けになってしまうんで精神的に疲れるというか・・・、なんか
圧迫感があるんですよね太くて大きい人ばかり見てると。痩せてて顔のくどくない
日本人を見るとやっぱりほっとするのです。



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