ちれぢれ草「仕事編2」 2002.2.19
池田久子

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〜〜〜〜  ちれぢれ草 〜〜〜〜 10巻  「仕事編2」 2002.2.19
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「 ちれぢれ草」は、チリ共和国に青年海外協力隊の村落開発普及員として
赴任しているわたくしが、日本から17000キロ離れた任国チリを少しでも知
っていただきたく、日々雑感を徒然なるままに綴ってお送りさせて頂きます。
ご不要の方はお手数ですがご連絡ください。   送信者:池田久子
 
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さて、落ち込みが始まったのは11月の半ば過ぎ。予防注射のためにサンチ
アゴに上京し、同期隊員同士めいっぱい日本語で日々の悩みをしゃべりまく
って、任地に戻ったら急にスペイン語が聞き取れずうまくしゃべれず、仕事は
相変わらず無く孤独感と無力感。なんといっても私の職種は仕事を自分で探
していかなきゃならない、自分の存在意義は自分で作り上げていくしかないと
いう状況に、何をしていったらいいのかとクヨクヨ考えてばかり。

言葉が通じないことでめげたり、村の広場を歩けばジロジロ見られたり、「チニ
ータ」と言われるのがいやで、なるべく学生や若者が固まっている傍を歩かな
いようにしたり、相当神経過敏になってオドオドしていたと思います。人懐こく
ヤアと声をかけられるのではなく遠巻きにジロジロ見られると何も悪いことは
していないのに、どうもうつむいてしまって・・・。多分こればっかりは経験して
みないと分からない感覚ではないかと思います。村にたった一人のアジア人、
旅行者でもなく、2年ここで生活し仕事していかなければという気持ちが自分を
どんどん不自由にしていました。

 さらに、12月の農家定例会にはほかの隊員の任地からの要請で出張が入り、
10月11月と実施した農家調査はできずじまい。しかしその出張から帰ってきたら、
自分の職場PRODESALが2002年の4月の30日には終了するといきなり聞かされ
てしまったのです。
 「現場に行けない、定例会に来る農家数が少なくなかなか対象農家に会えない、
スペイン語が上達しない」という基本的な悩みを抱え、仕事をどうしていこうか、
まだ暮らしにも言葉や習慣にもとまどいだらけの毎日に、さらに職場の終了という
話が加わってしまったから悩みは相当シリアスになってしまったのが12月中下旬。
本当は11月末からは販売についての村内と隣のチジャン市で調査をしようと思
っていたけど、チジャンの市場管理事務所を訪ね担当者と話をして市場を案内し
てもらったのと、農業試験場にJICAの専門家を訪ね、彼のチリ人の同僚から市場
データのフロッピーをコピーしてもらったくらいのことが精一杯。

PRODESALが終わって誰が残るのか、自分はここに残って働けるのか、自分の
同僚は誰になるのか、対象農家は変わるのか、PRODESAL対象農家への支援
はどうなるのか、言葉ができないと説明されても中々理解できず不安が募り悩む
ばかり。でも、なんとかこれを打破しなければ!とようやく行動を起こし始めたの
が、年明けからでした。

本来は村落開発普及員というのは農家と色々話す中で彼らのやりたいことや問題
点をひきだしてそれを支援していくべきだと思っていたのですが、今の段階では現
場に行くのも同僚が誘ってくれる時だけという状況。現場に行く手段を積極的に得
るために、役場の車で送迎してもらうには私が役場にとって利用価値のある人材
になること、それには女性対象の手工芸の先生になることだと方針を変えました。

年明け早々に今まで通算5人もの隊員が入り、紙漉きの手工芸活動も軌道にのり、
作品を販売もしているアルエ村を訪ねて、その村の女性に紙漉きのやり方を教えて
もらいました。そして、隊員連絡所の台所を使って、日本でも何度かやったことの
ある草木染めをもう一度やってみました。

これなら目新しいし、なんとかいけるんではないかと帰って職場で同僚らに見せた
ら大好評。紙透きはミキサーとアイロンは必要だけど、あとは身近な物ででき、リサ
イクルにも有効、草木染めも鍋と火と草木さえあればできると、ランニングコストの
安い点と女性の副収入になる可能性がある点を強調し、早速その企画書を書いて、
役場の地域開発課と上司に提出。そして村長と話し合いをする機会も得て、とんとん
拍子で役場が支援してくれそうな体制が整ってきたのです。

2月6日、農家女性グループのリーダー会議で、紹介しなさいと上司らに言われ、前日
は同僚らに台詞の原稿を手直ししてもらい、当日は草木染めのシャツを着て、台本読
みつつも笑顔で自己紹介と作品紹介をしたら女性たちから拍手喝采。早速先週水曜、
前から知っていた温室トマト栽培の女性グループ5人とその子供たちと一緒に紙透き
をやることができました。ついに手工芸講師としてデビュー!(いいのかなあ、本当
は村落開発普及員なのに・・・と思いつつ。まあ楽しんでいるからいいんだけど。)
もちろんこれがうまくいくかどうかはまったく未知数ですし、まだまだ私自身技術に
自信がないけれど、どうせ皆が知らない技術なので、開き直ってハッタリと自己流開
発いくしかないと思っているところです。とにかく楽しんで手工芸の色んな技をあれ
これと考えているところなのです。

まあ、そんなこんなでようやく仕事にひとつ目処がつき、毎日が楽しくなってきて、
気が付くと1月の半ば過ぎからは一人で平気で村の広場を歩き、ジロジロ見る人には
こっちから声なんかかけてしまうようになっていました。
そしてなんと明日から8日間の休暇をいただき自然豊かなパタゴニアに旅行します。
3月にはこの旅行のご報告をお届けしたいと思います。では・・・。

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