リトル・タジャン再訪
鈴木敦

 6月中旬に牧下氏、竹田氏とともにリトル・タジャンを訪問した。「ねもはも」第2号で紹介された「フィリピン・リトル・タジャン・プロジェクト」の一環であり、筆者にとっては二度目の訪問であった。今回の主な目的は現地の気象データを得るための機器の設置であった。温度、湿度に関してはサーモ・レコーダー「おんどとり」を設置し、1時間ごとのデータを得るように設定した。また降雨量については大型のペットボトル(直径14.5cm)を加工し集雨用の容器を作成した。この容器にたまった雨量は重量で記録してもらうこととし、降雨量の算出は水の比重を1として重量=体積と考え、体積を容器の底面積で除することにより降雨量(mm)を求めることとした。
 このような気象データは農業分野、特に輪作体系を考えていく上で重要であり、活用していきたいと考えている。以前にも報告したようにこの地域はトウモロコシの単作地帯であり地力維持やモノカルチャーの危険性の点で潜在的問題が存在している。またほとんどの圃場が傾斜地にあるため表土流出も問題となっている。今回の訪問でも表土流出の現場に出くわし、この地域で数少ない水田が流出した土壌により埋もれてしまったところも見受けられた。このような状況につてCORDEVの技術コンサルであるリカルド氏と意見交換を行ったが、降雨時期を考慮した輪作体系や植物残さを利用したマルチング等の点で意見が一致した。どのような国や地域にも固有の農業技術が存在するものだが経済性追求等によりそれが崩壊し、新たな問題の原因となっていることが多く見られる。しかし伝統的農業の見直しや新たな持続的農法の工夫も行われていて、このことはフィリピンにおいても同様である。前回の訪問の際この地域の農務省出先機関に行ったが、技官との話し合いやそこにある各作物の栽培法に関する小冊子等有用な情報は現地にもあることがわかった。課題はこのような情報をどのようにして現場に反映させるかである。日本においても生産者は一般的に新技術の導入に対して保守的であるが、経済的に余裕のないフィリピンの生産者はそれに増して保守的である。このような状況での技術普及には「やって見せる」つまりデモ農場が有効と思われる。幸いリトル・タジャンにはCORDEVのコーディネータであり、神父でもあるグレッグ氏が所属する教会の圃場が5haある。グレッグ氏もデモ農場の構想を持っており、今後「フィリピン・リトル・タジャン・プロジェクト」としてもこの件について協力していこうと考えている。
 9月に気象データの収集のため再度訪問する予定となっている。その際にデモ農場に関してより具体的な内容での意見交換を行いたいと考えている。

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