「堆肥」というと「土づくり」というイメージがありますが、その具体的な効果はなんだろうと思ったことはありませんか?また、ただなんとなく市販堆肥を使ったことはありませんか? ちなみに何かで読んだ話に、生産者が期待する堆肥の効用としては、1.収穫物の品質向上2.収量の増加3.化学肥料使用量の削減などが上位にあげられていました。 そこで今回は堆肥の効用について土の物理性・化学性・生物性にわけて調べてみることにしました。なお、ここでは各種有機物を堆積して十分に発酵・腐熟させたものを堆肥としています。藁やおが屑などを主原料とした植物質堆肥から牛・豚・鳥などの家畜ふんを主とした栄養堆肥まで実に様々な種類があります。 土の物理性改善効果 堆肥の施用により土の団粒化がすすみ、圃場の水はけ・水もちが良くなります。団粒化の促進により通気性も改善され、その結果、根張りが十分となり作物の生育が良くなります。根張りが良くなると養水分の吸収領域が広くなり、作物の収量や品質が向上し、異常気象に対する抵抗力も強くなる傾向があります。 ここで「団粒」とは、土壌粒子がお互いに結びついて集合体となっている状態をいいます。それとは逆に砂場の砂粒のように土壌粒子がばらばらの状態を単粒といいます。ちなみに物理性の改善には、稲わらやバークのような繊維質を多く含む堆肥が適しています。 土の化学性改善効果 堆肥中には窒素・燐酸・カリのような肥料成分をはじめ、化学肥料では補いきれないホウ素、モリブデンなど作物の生育に不可欠な微量要素が含まれています。堆肥の原料によって含まれている肥料成分の種類・濃度は異なります。また、有機物の分解過程で生じる生理活性物質(植物ホルモン様物質など)も認められており、生長を促進させる効果も期待できます。 また堆肥中に含まれる腐植により土中のCEC(陽イオン交換容量)が高まり肥持ちがよくなります。さらに土に固定されているミネラルを作物が吸収しやすいようなかたちにする働きもあります。 なお、「腐植」とは、有機物が土壌微生物・小動物により分解され、合成された複雑な高分子化合物です。「腐植」の広い意味では、微生物と新鮮な動植物遺体をのぞいたすべての有機物、土壌有機物をさす場合もあります。腐植が多く含まれる土ほど黒っぽい色になります。 土の生物性改善効果 土壌微生物の宝庫である堆肥を施用することにより土中の微生物の種類・量が豊かになり、有用菌が増加します。これらの微生物による直接的な拮抗や間接的な競合などの作用により土壌病害菌を抑制するという効果が期待できます。またこれらの土壌生物は土壌有機物の分解・再合成を促進し、腐植や粘着性物質を生産して団粒の形成促進に役立っています。 以上のことを一言でまとめると、堆肥の効用は土壌の物理性・化学性・生物性を徐々に改善し、作物の生育環境を良好に整えることにあります。これが「土づくり」に相当するのです。 また、目的にあわせて施用する堆肥の種類を検討することも大切なことです。(例:肥料的な効果も高めるには鶏糞など畜ふん主体の堆肥の使用量を多めにする) もちろん、すべてが良いことづくめというわけではありません。堆肥の使用が今一つ広がらないのにも理由があります。 次のような問題点が指摘されています。 ・堆肥製造に手間・時間・コストがかかる ・品質表示(成分表示など)が不十分で効果発現まで に時間がかかる ・堆肥の価格、品質差が大きい ・散布の負担が大きい(機械・設備の不足)等々 堆肥は長期的な土壌の肥沃土を高め総合的な土壌改良を促進うるとともに、地域資源を活用した物質循環の要となります。環境に配慮した農業やリサイクルへの関心が強まり、堆肥についても再度の見直し機運が高まっています。この社会的な動きによって、もっと手軽に堆肥が使えるようになればと思っています。 |