リトル・タジャン・プロジェクト
−マンゴーの接ぎ木講習会− 2004年6月


鈴木敦




新しい育苗場が完成していた 陰でマンゴーの接ぎ木講習。男女みんな真剣

 今年に入り初めて、約7カ月ぶりにフィリピン・リトル・タジャンを再訪した。

 3月に豚が侵入し、苗の一部が被害に遭った育苗場は、新たな場所に設置されていた。新たな育苗場は水やりを考え、前と同様に井戸の近くに設置され、放飼されている豚などの家畜の侵入を防ぐため今回はバラ線ではなくネットフェンスで囲われていた。被害を免れたあるいは損傷したものの回復したマンゴーの苗はおよそ60%で、生長に若干の遅れが見らるものの一部は接ぎ木をするのに十分な大きさに生長していた。今回それらを用いて接ぎ木講習会が開かれた。

 マンゴーの接ぎ木講習会は講師に地元の技術者(高校の先生)を招き、34名が参加した。まず講師の方が注意点等を説明しつつ実演し、その後各参加者が一本ずつ接ぎ木に挑戦した。技術的にはそれほど難しいものではないように見えたが、台木に切り込みを入れすぎたり、穂木の選定を間違えたりと失敗しながらも講師の方の手助けを得て、和気藹々としかしながら真剣に取り組んでいた。今回は初めてのことであり、接ぎ木の成功率はそれほど高くないであろうというという講師の方の話であり、今後数回の講習が必要であろうとのことであった。それでも自分で接ぎ木をした苗を大事そうに持ち帰る様子を見ると、マンゴーに対する期待の大きさを改めて感じた。これらの苗の接ぎ木の成否についてはジュリオスが追跡していくことになっている。

 講習会の後、小学校に教室でグループの会合が持たれた。会合はジュリオスが進行し、有機トウモロコシ作付け(このグループは有機トウモロコシの生産グループでもある)、堆肥の作り方、育苗場の管理方法、牛預託飼育プロジェクト等について話し合われた。
 牛預託飼育プロジェクトは前回の訪問したときに提案し開始したもので、生産者が肥料や種子等の農業資材をかなり高い金利で借金し購入している現状を少しでも緩和するために、グループ内に資金を低金利で貸し出す“銀行”のような機能が持てないか、といことで始まった。資金は購入した子牛を生産者に預け、成牛となったところで売却し、売上を積み立てていくというものである。草が豊富にあること、各自数等の牛を所有し飼育技術があることが預託方式を提案した理由で、時間はかかるものの地域の資源を有効利用でき、放牧なのでほとんど労力・経費がかからない。当初メンバーは10人で5頭の牛を購入し、くじ引きで5名に一頭ずつ預託した。くじにはずれた5名には、導入牛が繁殖した第2世代を預託することになっている。今回新たなメンバーが14名加わったことから、4頭を追加購入することになり、この会合でくじ引きが行われた。くじ引きは前回同様かなり盛り上がり、「牛がもらえる」と勘違いをしているのではと思えるほどであり、改めてグレッグからこのプロジェクトの目的を説明してもらった。すでにグレッグがこのプロジェクトの目的や規則に関する文書作成してあり、預託者には合意の上サインをもらうようにしているとのことであった。
 乾期に試験栽培したモスビーンはすでに収穫済みで、1リットルの種子から約20リットルの種子が得られたとのことであった。ただ一部良い結果が得られなかった生産者もいたとのことであった。グレッグの話では作物として未知(魅力が乏しい)ため栽培に力を入れなかったことが原因として考えられ、種子を再配分して再度挑戦するとのことであった。
 現在乾期外での栽培を試みている圃場があり、見に行った。水田の裏作として栽培されていたモスビーンは、地上部は十分に生長し根には多くの根粒菌が付着していた。乾期の栽培に比べ、栄養生長は盛んであるがその分生殖生長が遅れる傾向があるとのことで、恐らく降水量→土壌水分の違いによるものと考えられた。この時期の栽培で種子が得られなくとも緑肥および被覆作物としては十分であり、乾期での栽培結果と合わせてみても、モスビーン栽培の導入には大きな可能性があると思われ、この圃場における緑肥の稲作に対する影響を含めさらに調査することになった。

 今回の講習会は一種の“お祭り”でもあったようで、当日豚が1頭潰され、豪華な料理が振る舞われた。と殺された豚は捨てる所はほとんどなく、血液も料理に使われる。
 今回の豚肉料理は4品で、
 アドボ風(肉を醤油、酢、砂糖、ショウガ等で甘辛く煮た料理)、
 豚肉のスープ仕立て(肉を塩とショウガだけで煮たもの)、
 キニラウ風(豚肉を細かく刻み、ショウガ、タマネギと和えて酢でしめたもの。通常豚肉ではなく生魚が用いられる)、
 ディヌグアン風(腸や肝臓など内臓を細かく刻み、血液で和えたもの)であった。また朝の7時からお酒(“ジン”といっているが、サトウキビから作られたホワイト・ラム)も振る舞われた。このお酒には、ディヌグアンがとても良く合う。昼食、夕食時にもお酒がだされ、とても楽しい一日であった。

 以上のように今回の訪問は、各プロジェクトとも進展が確認でき有意義なものであった。これから堆肥づくりを始めるとのことであり、その窒素源としてイピルイピル、アカシヤなどのマメ科の苗木づくりにも力を入れることで育苗場を活用することも再確認した。モスビーンについては栽培時期と場所の組み合わせで多用な活用法があると思われ、今後も生産者と相談しつつ試行錯誤していきたいと思う。


豚を1頭解体中。内臓も血もあまさず。 米を炊く。20kgを一度に炊きます。
接ぎ木の実習。なかなか難しい。 テープで止める。テープは日本製。
モスビーン畑。水田の裏作。 小学校を借りて会議。議長はジュリオス






copyright 1998-2004 nemohamo