薬草を育ててみませんか?
白井清太

 日本産薬用作物の供給仲立ちを、契約栽培ならびに契約納入を通して細々ながら実践し続けて30年になる。この分野でも、ご多分に漏れず他の農産物同様、巨大な輸入圧力に押され通しである。輸出国において戦略物資とすら位置づけられている薬用原料植物素材を、単に経済性のみからの優位追究に血道を上げる問屋、メーカーも数多い。現に多くの薬種で国内生産が衰微し、消えつつある。
 しかしながら、輸入品一辺倒を見直す動きも出てきた。そこで聞かれる率直な声は、「邦産が高価になることはよくわかった。全てを邦産に切り換えることは現段階では不可能だが、供給源の分散を図るためにも、一部の供給を邦産に充てたい」との主張だ。この場合の条件として「耕種・品種・品質を踏まえ、最良のものの供給を期待したい」との前提を得ている。
 これには、いわゆる不純物(農薬)問題の顕在化や、『第十四改正日本薬局方』において細菌に関する規定の収載がなされる事情もある。誠に手前勝手な意向であるが、遺伝資源としても貴重な薬用作物種を軽々に持ち出して生産輸入を企てている動きから比べれば、この動きは大いなる進歩と言えよう。
 かくて、消費サイドの志向は見えてきたのであるが、肝心の生産者、それも有機を実践する農家との連携が、わが社としては希薄であるうらみがある。そこで、今回『ねもはも』の誌上をお借りして、有機を実践している生産者の方に、薬用作物の試作勧誘をする次第である。
 薬用作物栽培の長所は、1.いまだ作物としての馴化は不完全であるが、裏を返せば現代農業の耕種的特性より、近代の物質循環に適った耕種型への親和性が高いことが期待される 2.起源種が豊富で、多様な条件へ広く適性種を選択できる 3.植えつけ時に収穫物単価を決めての契約栽培をおこなえば、販売リスクを極小に抑えたうえ、商品性も期待できる 等が挙げられよう。
 短所としては、1.栽培法・至適耕種が確立されていないため、各々生産者自身が各々の栽培地でのこれらの条件を追究してゆかねばならないこと 2.収穫量のぶれが大きく収入見込みが想定しにくいこと が、考えられよう。
 ひと頃、薬草栽培が地域特産として盛んに取り上げられたことがあったが、その土地の産業として根付いているものは極めてわずかである。それは、健康食品ブームをモデルとして安易に想定していることが最大の理由だろう。いわゆる、ブームたる由縁は、その二次製品を売る者に“売る理由”が存在するだけで、買い手の手応えを満足させる力が足りない物がほとんどであるためだ。昨今の健食ブームにあって、二次製品の商品寿命はますます短くなっていると聞く。このような用途への植物の栽培を手掛けるより、地味ではあるが伝統薬の原料である植物の育成に努力を費やす方が遥かに失敗しにくいものとは言えなかろうか。
 さらに注目されるのは、一連の規制緩和の動きの中で、来春には医薬品の範囲基準の大幅な見直しが実現する見込みであることだ。ことによると、今まで薬用にのみ認められていた素材の用途が、食品に転用可能となることも期待される。
 そのあかつきには、地域の健康推進活動の一環として、手応えのある利活用を追究することも大いに現実味を帯びてくる。わが社との連携により栽培をすすめる生産者の方々とは、一層の情報共有をすすめ、生産物の購入をはじめ、多面的な利活用をも探ってゆきたいと考えている。
 ご要望、ご質問を心待ちにしている。

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