しずみんの まう・まかん
お題:おいしい豆乳!


水底 沈



●またまめで恐縮ですが
この時期になると豆のことばかり考えている。先日同居人とデパートのバレンタイン特設コーナーを通り過ぎたときに、ふと「ああ、そういえば節分だよねえ」とつぶやいたらずいぶん笑われた。いいじゃないか。二月は節分なのだ。
何しろ豆が好きだ。炒り豆、煮豆、卯の花、呉汁。豆腐に油揚げに厚揚げ、がんもなどもすべからく好きだ。
炒り豆は、生大豆をフライパンでじっくり煎ってつくる。アゴが強くないとかみ砕けない、硬派なスナックだ。もう少し軟派な炒り豆にしたければ、ひと晩水にひたしておいた大豆を電子レンジでじっくり加熱する。少し内部がスカスカになった、市販のものに近い炒り豆ができる。
ここのところ凝っているのは豆乳料理である。豆乳を使って、豆腐はもちろんのこと、鍋物を仕立てて楽しんだりしている。以前居酒屋で似たようなメニューが出たので家で試しに真似してみたところ、愕然とするほどうまかったのだ。

●乳でなく、豆。
実は私は市販の豆乳はあまり好きではなかった。「調整豆乳」として売られている、一時期むやみにはやったアレである。
ことに、いちご味や抹茶味などがつけてある嗜好飲料としての豆乳が口に合わない。なんだか上アゴにいやな香りが残って、おいしくいただけない。
ところが、先日鍋にしてみた豆乳の汁はなぜだかずいぶんうまいのだ。しいたけと昆布と鶏のだしで割った豆乳に、かつおだしの醤油が加わる。すりおろしたしょうがを薬味に添える。
見た目はいかにもクリームシチュー然としているが、なるほどつまりそれは「液体豆腐」なのであった。豆腐をうまく食べる方法で、豆乳はうまくなるのだ。ヤツはやっぱり、豆腐なのである。
「豆乳」の「乳」の部分をとって牛乳の代わりにしようとするから、甘くしたりいちごやコーヒーなどの香りをつけて「乳飲料」として売ろうとする。しかし、考えてもみたまえ。砂糖といちご粉末をふりかけた豆腐。むーん。昨今の和風デザート流行りではおいしくいただくお嬢さんもいるのかもわからないが、そういうものはできるだけアイスクリームやムースやケーキにふりかけていただきたい。
やはり、「豆乳」は「豆」の部分を取って、大豆としてうまく食べる方法を模索していきたい。
あれは、乳だが豆なのだ。やはり、ストロベリーとかコーヒーとかチョコレートより、ショーユやミソやネギ、ショーガを添わせていただきたい所存である。

●しぼりたて、豆の乳。
ちなみに、珍しく数字的なことを出してみると、市販の豆乳は下記の三種に分類されている。
 無調整豆乳(大豆固形成分 8%以上)
 調整豆乳 (大豆固形成分 6%以上)
 豆乳飲料 (大豆固形成分 果汁入り2%
       、その他4%以上)
この中で、かろうじて豆腐になれるのは「無調整豆乳」だけ。果汁はできれば勘弁してもらいたい。豆なんだってばよ。
最近は、「粉末豆乳」なんてのもある。試してみたが、少し粉っぽいようである。いざという時には助かるかもしれないが、豆腐にはならない。
やはり、一番うまいのは自宅で大豆を水に浸け、ひきつぶして煮て、絞ったばかりの絞り立て生豆乳であろう。
さらしでぎゅっとしぼってボウルに受けたばかりの豆乳は、ほかほかと盛大に湯気を上げ、甘くてほっとする優しい飲み物だ。
牛のお乳も豆のお乳も、絞り立てがいちばんうまいのが道理である。市販の無調整豆乳もなかなか便利だが、たまには絞りたての豆乳も味わってほしい。自宅で牛の乳をしぼるより、ずいぶん簡単なはずだ。



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