リトル・タジャン・プロジェクト続報
鈴木敦

 昨年10月以来、約6カ月ぶりにリトルタジャンを訪問した。今回の目的は継続している気象データの回収、植林の計画づくりおよび地図の作成であった。雨期の始まりで時折激しい雨にあったが、その合間を縫ってデータを収集することができた。
 昨年6月より開始した気象観測より雨量についてはほぼ1年間のデータが得られた。気温および湿度に関しては設定のミスがあったため、9カ月間のデータとなっている。今年はエルニーニョが発生するといわれており、気象観測を継続していくことにした。
苗木のサンプル 苗木の育て方



 植林の計画に関してはフィリピンのNGO・CORDEVのジュリオス氏、グレッグ氏と植林する樹種、場所および時期について話し合った。ジュリオス氏はリトルタジャン住民であり、グレッグ氏はCORDEVのリトルタジャン担当である。
 樹種についてはアグロフォレストリー・システムの考えを取り入れ、用途の異なる樹種を組み合わせること、ジュリオス氏がこれまで苗育成・植林した経験のあるものを考慮し、マンゴー、ココナッツ、マホガニー、ジェミリーナ、イピルイピル、ニームの6種類にすることにした(それぞれの樹種の用途と苗の価格は下記の表1参照)。
 ジュリオス氏は10年前にマホガニー、ジェミリーナ、イピルイピルの苗を種子より育成し、父親の農場の周囲に植林した経験があり、現在それらは定着し、順調に生育している。ジェミリーナは木の下に多数落ちている実より苗を育成することは可能とのことであった。
 ニームについてはアローナ(リトル・タジャンの近隣の町)周辺より実生を採取することができ、今回の訪問時にもジュリオス氏は50本以上の苗を採取してきた。またマンゴーについては、ジュリオス氏の叔父が種子から苗を育成し、果樹園を拡大している。マンゴーの苗以外は購入してもそれほど高いものではないが、上記のようにリトル・タジャンには各樹種の苗育成の技術があることから、これらを積極的に生かしていくことでグレッグ氏と意見が一致した。植林の時期についてはこれまでの気象データより適度な頻度で雨が降る9月ということになり、次回の訪問時には購入苗の植林と種子からの苗育成の作業を行うことにした。
 地図の作成はGPS(Global Position Sysytem)受信機を用いた。5秒間隔で緯度及び軽度を記録するようにGPS受信機を設定し、雨の合間を縫ってぬかるんだ道をバイクで走り回りデータを収集した。今回は道路と有機栽培のトウモロコシ畑を中心に回り、得られたデータで帰国後作成したのが下記の地図である。今後インターネット等により等高線のある地図データを入手し組み合わせることにより、また次回の訪問時に再度GPS受信機を持ってゆき必要なポイントを加えることによりこの地図を充実させたいと考えている。


表1.各樹種の用途と苗の価格
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樹名      用途 苗の価格
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マンゴー   果実生産用    P100〜150
ココナッツ  果実生産用    P 10〜 15
マホガニー  木材用      P 5〜 10
ジェミリーナ 木材用      P 5
イピルイピル 飼料、肥料用等
ニーム    自然農薬
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