土をもっと知ろう
成田国寛

日頃、何気なく目にする土。
なんだか当たり前すぎて、とりわけ意識にのぼる事は少ないのではないでしょうか。例えば、旅先で見た風景や出会った人は鮮明に思い出せますが、足下の土についての記憶をたどることは難しいものがあります(いつも踏まればかりいる土にとっては悲しいことですが…)。でも、空気と同じように土がなければ私たちは生きていいけないのは、ご存じの通りです。

では、「土」ってなんだろう、どうすればうまくつき合えるんだろうと考えたとき、私たち人間と似ている面があるんじゃないだろうかと思いました。例えば、人と同じように土にも個性(=土質)もあれば、体温(=土壌pHなど)もあります。相手が怒りっぽい人なら、それなりに対処したり、体温が高くなると気をつけ、予測される危険性を回避することができます。
土と密接な関係のある農業の現場では、経験上から土の個性を把握し、土(この場合は気候風土)に合わせて作物を作ってきました。これが昔ながらの特産品と呼ばれるものです。栽培される側の植物にとっても、土の好き嫌いがあるのですが、経験ある農家が仲人となって土と作物とをうまく見合いをさせるところが秘訣でした。
もちろん、現在では土質を大幅に手直しする土壌改良や施設栽培を行うことにより地域の土質に左右されない農業も可能となっています。実際、専門家やプロの農家は、細かく分析(物理性・化学性・生物性など)を行い、作物の生育条件にあった土質になるようさじ加減をしています。その分析項目の中で、巾広く活用されているのが土壌pHの測定です。

小学校の理科の時間にリトマス試験紙を使った実験をしたことを覚えているでしょうか。赤と青の細長い紙を、レモンの絞り汁や灰汁につけると色が変化したというアレです。
ちなみに、赤いリトマス紙が青に変色した場合、その液は酸性でしょうか、アルカリ性でしょうか? 答えは最後にあります。
このリトマス試験紙や測定機器を活用すると、土の酸性の程度(土壌pH)がわかります。なぜ、土のpHなど測定する必要があるかと言いますと、pHによって根の養分吸収がうまくできたりできなかったりするからです。多くの作物は微酸性から中性(pH6〜7)を好むことが知られていますが、中にはお茶の木のようにかなりの酸性を好む植物もあります。また、適応範囲が広いものから、非常に狭いものまであり、植えつける作物に応じて土のpHを修正しなくてはならないものがあります。
日本は雨が多いため、何もしないと土は酸性に傾きやすい(雨によって土のアルカリ性を保つカルシウムやマグネシウムなどのミネラル類が流されてしまう)ので、作付けをする前に必ずと言っていいほど石灰・苦土質の肥料をまきます。しかし、土壌pHを測定せずに長年同じ量だけ入れると、場合により、補正が進みすぎてアルカリ側に傾いてしまうこともあります。こうなると、根による養分吸収バランスが崩れ、お金をかけて肥料をふったのに、かえって作物を作りにくくしてしまうといった事態にもなります。私たちも、無理なダイエットや食事療法を行うと、かえって体に害になることもあるように、土でも同じ事が起きるのです。
このように、植えつける作物が好きなpHがどこなのかを知っておくことは、無駄のない施肥や作付け体系を考える点で重要な指標となります。家庭菜園の場合にも応用できますので、せめて作付け前にpHを測定して、作物にあった値になっているかを確認することをお勧めします。
答え:アルカリ性

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