発行によせて
発行責任者 牧下圭貴

食べもの、水、空気は人間が生きるために欠かせません。そのどれもが、この数十年でずいぶん「まずく」なってしまいました。
いやだなあ。おいしい食べものを食べたい。おいしい水を飲みたい。おいしい空気で暮らしたい。
自然の欲望なのですが、どうも、人間が「まずく」しているようで、なんとも情けないことになっています。
なんとかならんもんかい。そう考えて、食べものやら、食べものができるところや、食べたあとのゆくえを追いかけました。
悲しい言葉がたくさんありました。
残留農薬、収穫後農薬、食品添加物、家畜への残留化学物質、放射性物質照射食品、遺伝子組み換え食品。合成洗剤、シックホーム、環境ホルモン、ダイオキシン。不妊、アレルギー・アトピー、ガンの増加。低い自給率、食料輸入のかげの飢餓、貧困、日本の農家の苦悩、廃業、借金。人口増加と、食料生産能力の低下。土壌流出、水質汚染、大気汚染…。
元気な言葉もたくさんありました。
有機農業、環境保全型農業、自然農法。添加物を使わない加工食品、産直、自給運動、石けん運動、植林運動、田舎ぐらし、草の根貿易…。いっぱいテーマがあって、いっぱいやることがありました。
どれもとても大切なことです。地球の生態系は、複雑に結びつきあってできているんだし、人間の社会も、複雑にからみあってできているからです。
全部いっぺんに解決する方法はありません。ひとつひとつ、自分にふりかかってきたり、自分が一番関心のあることから手をつけるしかありません。
食いしん坊の私にとって、一番心にひっかかった言葉が、「自給」でした。日本国の自給率は、まるで国土が砂漠で人口が増えすぎた国のようです。水にも太陽にも土にも恵まれた土地を持ちながら、よその国から水や食べものを買ってこなければ飢えてしまうなんて、冗談みたいな話です。
「自給率を上げなければならない」みんなそう言います。ところが、実際に生産している人は、おじいさん、おばあさんばかり。「来年続けているか、わからん」という人たちの方が多いのです。
やばい。食べものがなくなるのが、一番やばい。
しかも、よその国の人々や土地をすでに巻き添えにしているんだから、なおさら悪い。
どうしよう。自分で作るようになればいいんだ。でも、自分だけ作っても、他の人が困ってしまっては、まずい。友達が来たら、やっぱり分けてしまうだろう。自分が作るだけでは足りない。できるだけ若い人が、どんどん自分で作るようになればいいんだ。そしたら、自分に来る分け前も増えるだろうし、もっと気楽になるだろう。
ということで、私の生活でもまだやれていないくせに、人に呼びかけるのもおこがましいんですが、自分の生活の中で、自給率を上げませんか。
これが、農と食の環境フォーラムの目的です。
「自給」と言っても、それだけでは解決しないわけで、水や空気や土地が汚れたらどうしようもないです。そこで、できるだけいろんな問題をできるだけ多くの人に考えてもらえるような情報ネットワークをつくりたいと思いました。
それが、ねもはもです。
相互情報の場として、大いに読み、書いてください。どうぞ、末永くよろしくお願いします。


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