北海道新規就農者のキモチ
藤田京子


「農業をしたい! それも北海道で」という、かねてからの思いに一歩近づいて、埼玉県小川町での農業研修を経て昨年4月に引っ越してきた北海道。私たち夫婦はいわゆる「新規就農者」だ。北海道一年目の今年は、実践と研修を兼ねて、地元の農家で勉強させていただきつつ、畑を少し借りていろいろな作物をつくってみた。
一般に新規就農者は、理念的なところから農業、とくに有機農業に魅力を感じることが多いのではないかと思う。私たちもその例にもれず、家畜を取り入れ、できるだけ農場内・地域内で資源を循環させる有機農業的な暮らしをめざしたいと考えている。また、生産者が消費者と農作物を直接やりとりする「提携」を、なんらかの形で経営のなかに取り入れたいと思っている。今年は、畑でとれたじゃがいも、かぼちゃ、たまねぎの宅急便利用による道外向け販売を試みたところ、予想以上に好調だった。
食べてくださる方の声は作る側にとって何よりも励みになることを実感。来年以降もこの直送販売を続けていきたい。
私たちがめざしている、こうした有機農業や農作物の直売に対して、農村では一般に風当たりが強い。「有機農業っていうけど、農薬を全然使わないなんて無理だからね」、「新規就農の人はよく直売でやりたがるから、農協から嫌われるんだよね」、「家畜飼ったり、作目増やしたりすると手間ばかりかかって、失敗する」というのが、既存の農家や役場の大方の意見だ。つまり、普通の農家と同じようなやり方でなければ農業はやっていけない、というわけだ。
先日、町内で新規就農した人、これからしようとしている人たちと集まって飲んだ。こうした仲間は、有機農業、消費者との提携、なるべくお金をかけない農業をめざすなど、やはり、既存の農家とは違うやり方で農業をしたいと考えている。経済的なことや、役場・農協との関係など、抱えている悩みもまた同じだ。
その中の一人が言った。「既存の農家でも、負債を抱えて農業を辞めていく人はたくさんいる。どうせコケるなら、自分のやりたいやり方でやってコケたい」。最近曇りがちだった心のなかにすこし光がさしたような気がした。

copyright 1998-2000 nemohamo