はるの魂 丸目はるのSF論評


グリム・スペース
ROADSIDE PICNIC

アン・アギアレイ
2008



 21世紀だなあ。しみじみそう思う。21世紀らしいスペースオペラです。王道かもしれない。主人公は、J遺伝子を持ち、異空間グリムスペースに入る超光速航法をナビゲートする能力を持った女性ジャンパー、シランサ・ジャックス。ジャンパーは企業複合体ファーワン社によって独占されており、シランサはその中でも超一流のジャンパーであった。ジャンパーには能力の限界が訪れる。シランサは、長い間能力を発揮し続けていたが、ある事故をきっかけに、パートナーのパイロットを失い、そして、ファーワン社によって軟禁されていた。「私が殺したのだろうか」「本当の原因はなんだったのだろうか」その疑問が彼女を突き動かす。ジャンパーを求めてきた男によって軟禁から救助されたシランサは、惑星や星間宇宙を舞台に、悩みながらも真相を求めて生き抜くのであった。
 強力な武器があるわけではない。
 敵は、社会そのものと言ってもいい、産軍複合体である。
 打って出るのは、おんぼろだったり、ぽんこつだったりする宇宙船。
 恋人だったパイロットへの思い。新たな恋愛の予感。そして、生きるために戦う。
 21世紀のヒーローは、たくましいのだ。


(2011年12月24日)




TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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