はるの魂 丸目はるのSF論評


荒れ狂う深淵
FURIOUS GULF

グレゴリイ・ベンフォード
1994



 さて、「星々の海をこえて」から10年。前作「光の潮流」からも5年が過ぎて、発表されたのが「荒れ狂う深淵」。いよいよ、キリーン、トビーらビショップ族と、伝説の男ナイジェル・ウォームズリーが、同じ舞台に登場する。どうしてそんなことが可能になるのか? 宇宙の中心、ブラックホールの辺縁、時間と空間が意味を持たなくなる領域に、有機生命体らがなんとか生きていける作られた「エルゴ空間」があった。恒星船アルゴは、機械知性の攻撃に追われ、ポッド族の後方支援によって、なんとかエルゴ空間に逃げ込むことができた。
 ブラックホールの辺縁の世界を描き出す。これこそベンフォードがやりたかったことなのか? そして、そんなところで繰り広げられる機械知性と有機知性、それに磁気精神をはじめとするより上位の存在たちの理解しがたい戦い、生存。長く読んできたごほうびだ。でも、中途半端に終わっちゃう。やっぱり2冊セットなんだ。続編かつシリーズ最終の「輝く永遠への航海」を用意しておかないと後悔しちゃう。


(2011.4)




TEXT:丸目はる
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