はるの魂 丸目はるのSF論評


復讐の船
THE SHIP AVENGED

S・M・スターリング(アン・マキャフリー原案)
1997



「歌う船」シリーズ第7弾。「戦う船」に続く、スターリングの手による作品の主人公は、前作で晴れて宇宙ステーション頭脳シメオン・ハップと、彼のプローン・シャンナの正式な養子となったジョート・シメオン=ハップちゃん。いや、もう子どもではない。かつての天才ハッカーは、商船ワイアルの船長として、1人のクルーと、様々なプログラムを追加したAIとともに、「まっとうな」自由貿易船長をやっていた。とはいえ、そこは、シメオンとシャンナの子、中央諸世界の保安局の覚えめでたく、時には、貴重な「情報」を運ぶ仕事も請け負っていた。
 さて、「戦う船」でこてんぱんにやられてしまったコルナー人宇宙海賊の生き残り。復讐と再興を誓ってふたたび中央諸世界と、彼らが敗北するきっかけとなったベセル人のリーダーを狙っていた。そのベセル人のリーダー、アモス・ベン・シエラ・ヌエヴァがコルナー人に誘拐されてしまう。この秘密奪回作戦に巻き込まれることになったジョートは、さらなる大きなトラブルに見舞われ、大借金の末、愛船ワイアルを借金の形にとられかねない事態に。さあ、どうする、どうなる。

「歌う船」シリーズの世界で、主人公がついに頭脳船でも宇宙ステーション頭脳でもなくなり、マキャフリーの世界で出てくるような若い「これから」の女性となった。この中央諸世界には頭脳船があり、植民星があり、異星社会があり、変容した人類社会がある。どれだけでも話を広げられるのである。
 が、本書を最後に「歌う船」シリーズは終了したようである。うーん、残念。

(2011.2.1)




TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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