はるの魂 丸目はるのSF論評


ノーストリリア
NORSTRILLIA

コードウェイナー・スミス
1975



 惑星ノーストリリア。砂漠の、羊の星。人類世界にとって欠かすことのできない不老長寿薬サンタクララ薬、またはストルーンと呼ばれる薬物は、ノーストリリアの病気にかかった羊だけから産出される。故に、ノーストリリアは宇宙一裕福な星。故に、ノーストリリアは他のどのような星よりも防衛に長けた星。ひとりひとりが厳格に育てられ、自立し、生き残ることを求められる星。すでに無き女王陛下を戴く星、オールド・ノース・オーストラリア。
 ひとりの少年がいた。長い名前を持つが、簡単に言えば、ロッド・マクバン。彼は生き延びたそして、生き延び続けるために、地球を買った。古い、古い惑星。人類が生まれた惑星であること、人類補完機構の本部であることを除けば、それほど価値のない惑星。ロッドが地球を買ったことで、地球とノーストリリアと人類補完機構はそれぞれに困惑し、事物の収束を願った。地球を買った男がいることを、耳ざとい者たちは知った。彼らは、ロッドに期待を寄せた。いや、ロッドの立場や地位や権力や金に、ということだが。
 さて、自覚のないままに地球を買ったロッドは、地球に行くこととなる。
 もちろん、いろんなことが起る。
 猫娘ク・メルも登場する。
 人類補完機構で「人間の再発見」を推し進めるのロード・ジェストコーストも登場する。

 コードウェイナー・スミスの、人類補完機構シリーズの唯一の長編である。
 最初に、短編集「鼠と竜のゲーム」「シェイヨルという名の星」を読み、それから、心落ち着けて、わくわくしながら、一気に読むといい。ここにすべてが結集する。
 しばらくの間、今が21世紀程度ではなく、数万年先の世界で、ここは地球か、それ以外のどこかの星で生きているような気持ちになれる。

 あー、幸せ。


(2010.11)




TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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