はるの魂 丸目はるのSF論評


ハンターズ・ラン
HUNTER'S RUN

ジョージ・R・R・マーティン&ガードナー・ドゾワ&ダニエル・エイブラハム
2007



 人類は宇宙に進出した。ところがどっこい、宇宙は弱肉強食の世界。強力な異星人の助けで、人類は人類が生息可能な惑星への植民を続けてきた。そんな植民星サン・パウロは、入植2世代目に入ったばかりの辺境の惑星。厳しい自然環境の中で多くの者が命を落とし、生活は厳しい。ラモン・エスペポはフリーの探鉱師。未開の地に入って、有望な鉱脈を探すのを生業にしている。数カ月の間、辺境の中の辺境をさまよい、運が良ければ金づるを持って帰ることになる。金を持ち帰れば、王様亭で酒を飲む。喧嘩をする。暴力的な彼女と喧嘩をしては、愛し合う。シンプルかつ悩み多い人生。
 植民星サン・パウロは異様な興奮に包まれていた。人類のパートナーたる異星種族エニェが、その巨大宇宙船団の予定を繰り上げて訪問するというのだ。この植民星を去るたったひとつの手段でもあり、彼らがもたらす様々な交易品などの期待もある。
 そんな喧噪の中で、ラモン・エスペポは、エウロパ人を殺してしまう。なぜ、彼を殺したのか? それすら思い出せない酩酊状態の中で…。
 未開の山に逃亡したところで、植民星サン・パウロに潜む異星種族に捕まってしまう。彼らの秘密を持って逃亡した人類を探せ、というのだ。そのために異星種族のひとりとつながれ、サン・パウロの密林をさまようはめになる。
 ハードボイルド、逃亡劇、そして、SFならではの設定。
 それにしても痛い。作家3人がそろいもそろって主人公に冷たい。いじめて、いじめて、いじめぬく。まるで修行なのか。

 解説にも書かれていたが、マーティンの「フィーバー・ドリーム」にも似た密林の川旅が描かれる。よくよく好きなのだろう。たしかに趣深い。
 本書「ハンターズ・ラン」はもともと1977年にドゾワがアイディアを出し、それをマーティンと共著するつもりでいたが、なかなかうまくいかず、20年ほど放置、その後、エイブラハムが加わって、ようやく完成に至った作品である。30年分のエッセンスがたっぷりつまったこの作品を楽しむといい。

(2010.08.20)




TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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