はるの魂 丸目はるのSF論評


シティ5からの脱出
THE KNIGHTS OF THE LIMITS

バリントン・J・ベイリー
1978



 ベイリーの短編集である。大学生の頃に買って、一度読んだきりであった。一気に読んでみると、地下や閉鎖された宇宙空間など狭いところにとじこもった人類の姿が浮かび上がる。読んでいて何となく息苦しい。
 私たちが生きているあたりは、渦巻き銀河のわりと端の方で、物質の量もすかすかである。宇宙のどこかには、物質の密度が大きく、空間がまれなところもあるに違いない。そういうところにおいて、知覚する生命体がいたら、空間をどのように見るのであろうか?
 たとえば、そういう思いつきを小説に仕立てる。
 それがバリントン・J・ベイリーである。
 たぶん、「笑う」というのが正しい読み方なんだろう。イギリス的な、皮肉の効いた笑い。小説ではよく分からないんだよなあ。

 たとえば、今日。首都圏は連日の猛暑に苦しんでいた。このまま毎年猛暑日が増えていったら、どうなるのだろう。ロシアでは、ウォッカを飲んで水につかり溺れる人が続出しているという。日本でも熱中症での死者が多い。昨年だったか、ヨーロッパでも同様のことがあった。私たちはこの暑さにどうやって適応していくのだろうか?
 これを、科学的な知見を加えつつ、奇想天外な解決方法を用意し、そして最後に皮肉な笑いで落とせ、と言われて、それに答えを出すのがベイリー。すごい。

(2010.7.24)




TEXT:丸目はる
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