はるの魂 丸目はるのSF論評


フィーバードリーム
FEVRE DREAM

ジョージ・R・R・マーティン
1982



 SFマガジンベストSF1990(海外編)1位の作品である。ということはSFであろう。ま、ファンタジーですけど。
 19世紀アメリカ。薪を燃やして蒸気機関を動かす時代のミシシッピ川。あまたの蒸気船が川を上り、下り、人や荷物や情報を伝えていた時代。今風に言うならば、木質バイオマスの時代から化石燃料の時代に移る直前の時代。蒸気船の船長が力を持っていた時代。そして、闇の異種族である吸血鬼が人々を恐怖に陥れる時代。まだ南北戦争が始まる前、州によっては奴隷制が強く、州によっては奴隷制を否定し始めていた時代。醜く、運のない元船長アブナー・マーシュは、新造船の共同経営者にならないかと見知らぬ男に話を持ちかけられる。ジョシュア・ヨーク。色白で、夜の闇の中でしか行動しない男。金を出し、新たな船を作り、運行を任せるという。その条件は奇妙なものだった。共同船長にすること、自分の行動に疑義をはさまないこと、ミシシッピ川で運行すること。
 アブナー・マーシュは、約束と義理を果たす男だった。奇妙ながらも信用のおける人間として、ジョシュア・ヨークを受け入れ、彼とともに船を作り、ミシシッピ川で最高のデザインと速度を持つ新造船の船長になる夢を選んだ。
 それは、アブナーに、人間とは違う種族との不思議な友情と、語ることのできない希有な人生をもたらすことになった。

 そうかあ。木が燃やされていた時代かあ。同じように煙が出ていても、石炭とはずいぶん違ったのだろう。
 そうだよなあ。吸血鬼って長寿なのだからメトセラの種族だよなあ。
 なるほどなあ。ジョージ・R・R・マーティンの書く「境界線で力を持つ人たち」には迫力があるよなあ。
 アブナー・マーシュ船長って、結構いいもの食べてるなあ。
 フライドチキンにカブと玉ねぎを添えた皿と、チーズを乗せたアップルパイ。
 フライドチキンと、トウモロコシパンと、スイートピーと、ジャガイモ。
 ローストダックとサツマイモとスナップビーンズと、熱々のパンかあ。
 人口も少なく、土地も肥え、農薬も化学肥料もない時代。食材がおいしそう。
 っと、血も濃かったのだろうか。



(2009.10.01)




TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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