はるの魂 丸目はるのSF論評


デューンへの道公家ハルコンネン
DUNE HOUSE HARKONNEN

ブライアン・ハーバート、ケヴィン・J・アンダースン
2000



12年振りに通勤している。前の会社を辞めた後、12年ほど、フリーランスの仕事を中心としていたのだが、ここに来て通勤するはめになってしまった。片道2時間、往復4時間。過去1年、好きな読書を中断して籠もって仕事に追われていたことからすると、この通勤時間は読書タイムとしてのご褒美かもしれない。どうにも移動時間というのは無駄であるのだが、読書タイムだと思えばよい。ということで、いろいろ読み始めたのだが、久しぶりにデューンシリーズにも手を染めてみることにした。「デューンへの道」から順番に読んでいる。第2弾は「公家ハルコンネン」の3冊。
 物語の中では、第1弾「公家アトレイデ」から12年が過ぎた。前作で生まれたばかりのジェシカは12歳になり、ベネ・ゲゼリットで訓練中。惑星学者パードット・カインズと砂漠の民フレーメンとの間に生まれたリエト・カインズも12歳になり、アラキスで帝国の惑星学者として、そして、ハルコンネンと戦うフレーメンとして訓練中。皇帝シャッダムのところでは、イルーラン姫をはじめ次々と女の子ばかりが生まれていた。アトレイデ家に迎えられたダンカン・アイダホは21歳になり、剣術教師ソードマスターの訓練惑星への入学が認められた。そして、われらがレト・アトレイデ侯爵は26歳になり、惑星カラダンに賓客として滞在する失墜した公家ヴェルニウスの息子ロンバールとともに過ごし、ヴェルニウスの娘カイレアへの恋慕だけは収まる気配が見えなかった。しかし、侯爵として、結婚すべきは力のある公家。かといって、カイレアほどの女性を妾妃とするのも悩ましいのである。
 一方、ウラディミール・ハルコンネン男爵。アトレイデ家の若き侯爵レトを失墜させるたくらみが失敗に終わる中、スパイスをめぐり皇帝の監視も厳しくなっていく。皇帝らの目をそらすために、ふたたびアトレイデ家をおとしめる作戦をスタートさせる。
 時が経ち、悩んだ末に、ついにカイレアと結ばれたレト。それは、不幸の始まりであった。それはできないと知っていながらも正妻を望むカイレアと、常に「公正」であろうとするレトの不仲は深まり、その溝は、ふたりの間に生まれた息子ヴィクターの存在でも埋めることはできなかった。やがて、ベネ・ゲゼリットは、ジェシカをレトの元に送り込む。陰謀の中の陰謀。レトはジェシカを拒否しながらも、カイレアとの間が修復する気配はない。やがてカイレアの心の闇は広がっていくのであった…。

 ということで、「公家ハルコンネン」では、このほか、将来大きな役割を担う医師のユエ、戦う吟遊詩人ガーニー・ハレックも初登場。ほぼ、「砂の惑星」の主役級は出そろった。あとは、主人公ポウルの誕生を待つばかりなのだが、というところまでが本書。独自の設定で語られる惑星イックスと失われた公家ヴェルニウス家の復讐劇を中心に、帝国とベネ・ゲゼリット、スペース・ギルド、通商協会といった帝国政治、アラキスをめぐるフレーメンとハルコンネンの戦いなどが描かれていく。1.5日で1冊。ちょうど1週間で3冊ぐらい。ほどよいスピードで読めるところもまたよし。


(2009.07.01)

TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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