はるの魂 丸目はるのSF論評


ひとりっ子
SINGLETON AND OTHER STORIES

グレッグ・イーガン
2006



 グレッグ・イーガンの短編集である。私たちは世界を感じている。世界を感じているのは「脳」の情報処理である。入ってくるデータが同じでも処理の仕方で世界は変わる。処理の仕方のパターンの蓄積こそが世界観と言ってもいいのかも知れない。だから、処理の仕方のパターンを変えてしまえば世界観は変わる。あなたは誰になりたい。あなたは何者になりたい。あなたは、何だ?
 宇宙は、認識されなければ存在しないのか?
 森の中の木が倒れても、その音を聞く人がいなければ、森の中の木は倒れていないのか?
 猫は生きているのか、死んでいるのか?
 イーガンは、様々な形で問いかけ続ける。
 幸せとは、生きるとは、知るとは、宇宙とは、世界とは。
 そして、そういう頭が混乱したくなりそうな問いかけの上で、「幸せ」のありようを語る。
 宇宙のありようを研究している物理学者が、あるいは脳の働きを研究している生物学者が何を考えているのか、そのわずかな一端を感じたいと思ったら、グレッグ・イーガンの短編集を読むといい。なんとなく分かるような気持ちになるから。



(2009.01)




TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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