はるの魂 丸目はるのSF論評


地球人のお荷物
EARTHMAN'S BURDEN

ポール・アンダースン&ゴードン・R・ディクスン
1957



 人類は宇宙に進出し、やがて世界連邦共和国としてひとつの地球を達成する。さらに汎生物連盟と連携し、宇宙航行種属の仲間入りをする。未開の異種族を教化し、引き上げることこそ人類の使命であった。惑星トーカには、第一次探検隊がかつて調査を行い、ほ乳類原住民ホーカと、は虫類原住民スリッシーが対立しながら知的生命体として存在していることが確認されていた。今、惑星トーカに星間調査部のアレグザンダー・ジョーンズが不時着した。そこで彼が見たものは、地球人がよく知るテディベアそっくりのホーカたちが、現実と空想の区別がつかないままに「地球のあること」に熱中してしまった姿であった。彼らは西部劇の主人公となり、ドン・ファンになり、宇宙パトロール隊になり、シャーロック・ホームズになり、その役柄に熱中し、なりきる。心から。本気で。間違いなく。アレグザンダー少尉は、やがて惑星トーカのホーカを宇宙種属に引き上げるための駐在全権大使として任命されてしまう。誰も、この「地球人のお荷物」を抱え込む気にはなれないのだ。
 かくして、ホーカ達が「まったく悪気なく」起こす数々の事件と、地球及び汎生物連盟のまか不思議な官僚主義の間で、アレグザンダーの悩みはつきることがないのであった。

 テディベアが、高度な知性を持っており、手先が器用だと思ってくれたまえ。
 しかも、現実と虚構の区別がつかず、すぐに「熱中」するのである。
 映画「スター・ウォーズ」なんて、決して、間違っても、見せてはいけない。
 アル・ゴアの「不都合な真実」もまずいかも知れないが、こちらは、ホーカが熱中するとは思えないから大丈夫だ。
 映画「羊たちの沈黙」なんて、危険だ。危なすぎる。
 映画「シカゴ」は、間違いなく熱中するに違いない。怖い怖い。
 そういうことだから、楽しんで読んで欲しい。
 僕は15歳の冬に買って、これを読んだ記憶がある。高校1年の時だ。もっとこういうのをたくさん読んでいれば、もうすこしくだけた人格になれたかもしれない。そう思っていま、できるだけたくさんこういう作品を読もうと思っている。
 ちなみに2006年に再版されている。いいことである。
 個人的には、新井苑子さんによるかつてのとぼけた感じの表紙が気に入っていたので、機会があれば、表紙だけでも見つけてみて欲しい。



(2008.02.29)



TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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