はるの魂 丸目はるのSF論評


大宇宙を継ぐ者
PERRY RHODAN 1 / UNTERNEHMEN STARDUST / DIE DRITTE MACHT

K・H・シェール、クラーク・ダールトン
1961


 宇宙英雄ローダン・シリーズ第一弾は、ドイツで1961年にスタートし、日本では松谷健二の訳によって1971年に出版がスタートした。私がペリー・ローダンシリーズに出会ったのは中学生の終わり際で、友人が自宅に置いていたペリー・ローダンシリーズを親に捨てられそうになったためしばらく預かってほしいと持ってきたのがきっかけである。当時はまだ1巻からそろえることが可能な時期であった。最初のうちは背表紙が当時のハヤカワSF文庫と同じ白背であったが、ちょうど私が出会い始めた頃に、背に色がつけられるようになった。
 友人から借りたのがたしか20巻ぐらいで、私もその後15巻程度を買ったと記憶している。その後は、時々買ったり、立ち読みしていたが、読んでいたのは主に松谷氏の後書きであったのを記憶している。
 なにせ、日本の訳者はひとり、一方、ドイツでは多くの作者が連作し、次々と書かれている。決して追いつかない作品といわれたが、松谷健二氏にとっては、亡くなるまでのライフワークとなってしまった。今も、お弟子さんなどによる翻訳が続けられている。
 そして、今も、ペリー・ローダンシリーズは新たに発刊され続けており、ドイツでは本編が2300巻を超え、別シリーズ、外伝なども信じられない量が出ているらしい。
 日本では、2007年4月現在、334巻(つまり、668作目)までが翻訳されている。遠いなあ。

 さて、本書「大宇宙を継ぐ者」であるが、1971年、アメリカ宇宙軍のペリー・ローダン少佐ら4人が初の有人月ロケットに乗って月へ旅立つ。しかし、着陸直前になって月からの攻撃により不時着。当初は、敵国の月ロケットからの攻撃かと思われたが、それは、宇宙からのはるかに進んだ文明を持つ宇宙船による攻撃であった。アトラン人と名乗る彼らは、人類によく似た種属であるが、宇宙船が動けなくなり、月に滞在していたのである。その高度な科学技術を目の当たりにしたローダン少佐は、この技術が地球の一勢力に渡れば、西側、東側、アジア側による核戦争の危機にある地球上で、相互不信による終末戦争が起こると確信し、宇宙人の技術が一勢力に渡らないよう、そして、人類が宇宙に進出できるようにするため、地球のすべての勢力に対して、独立を宣言するのであった。
 かくして、ペリー・ローダンの地球、太陽系、そして銀河宇宙を超えての冒険と戦いの幕が開いた。

 そうか、最初の1巻2編は、本当に導入だけなんだ。ペリー・ローダンはまだ地球を平定していないし、不死にもなっていないし、月より遠くにもたどりついていないのか。
 ゆっくりしているのだなあ。
 と、本書「大宇宙を継ぐ者」と初期設定が似ている「反逆者の月」(デイヴィッド・ウェーバー、1991)のスピード感あふれる作品を読んだ後に思うのだった。まったりとしたいい時代だったなあ。
 今のペリー・ローダンシリーズって、どんなスピード感なのだろう。

 手元にはこの1巻しかないが、実家には15巻ぐらいまではあったはずだ。今度取り寄せて読んでみようっと。

(2007.04.09)




TEXT:丸目はる
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