はるの魂 丸目はるのSF論評


空飛び猫
CATWINGS

アーシュラ・K・ル=グウィン
1988


 SFか? と、聞かれるとつらいのだが、ル=グウィンだから許して欲しい。
 猫ばなしである。猫とイルカはどうにもSFの相性がよいらしく、いろんな作品に登場する。とりわけ猫は愛されている。「夏への扉」(ハインライン)を出すまでもない。猫にはSF魂をゆさぶる何かがあるのだろう。
 さて、ル=グウィンの猫好きはSF界ではよく知られた話である。
 そこで、「空飛び猫」である。絵本で、日本では村上春樹が翻訳している。
 村上春樹も猫好きな作家のひとりであり、英文の好みがはっきりしている作家である。
 そして、ル=グウィンの文章が好きなのだ。

 評論するような内容ではない。

 あるとき、羽の生えた猫が4匹生まれたのだ。羽は飾りではなく、空を飛ぶことができた。だから、羽のない母猫は、4匹の子猫たちに語りかける。「飛びなさい」。
 そして、冒険がはじまる。
 それだけ。
 十分じゃないか。
 どこかには、いるのである。
 羽の生えた猫や、犬や、ねずみが。
 空を飛んでいるのである。きっと、間違いなく。
 それを知っている方が、知らないでいるよりもずっと幸せになれる。
 そう、思いませんか?


(2006.08.03)





TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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