はるの魂 丸目はるのSF論評


銀河帝国の興亡 2
FOUNDATION AND EMPIRE

アイザック・アシモフ
1952


 ファウンデーションシリーズの第二部であり、いよいよミュールが登場する。私の手元にあるのは創元版の「銀河帝国の興亡 2」1979年24版である。ハヤカワ文庫からも1984年に「ファウンデーション対帝国」として出版されている。
 前半は帝国の清廉潔白な将軍ベル・リオーズによるファウンデーションの惑星テルミナス(ハヤカワ版ではターミナス、以下統一)への攻撃と、それに対するファウンデーションの反撃を描く。セルダン没後2世紀となり、ファウンデーションは貿易商人たちが力を持ちながらも政府は硬直化していた。そんななか、若き商人ラサン・ディヴァーズが活躍し一時は危機に陥ったファウンデーションは帝国との直接対決に勝利する。

 そして、それから1世紀が過ぎ、ファウンデーションは官僚主義と権威主義がはびこり「市長」は世襲となって三世代を迎えていた。
 一方、かつての帝国の中心惑星トランターは40年前に大略奪が起こり、人口は1億程度の農業とくず鉄輸出惑星になりつつあった。帝国の残滓は農業惑星にネオトランターを設立しわずか20程度の惑星を支配するのみと化していた。
 いましも、かつての貿易商人の息子フランとターミナス人で豪商ホーバー・マロウの子孫ベイタが結婚し、ターミナスからフランの故郷・ヘイブン第二惑星へと引越ししてきた。ちょうどそのころ、ミュールと呼ばれる不思議な男が、歓楽の惑星カルガンをあっという間に征服した。ミュールはあっという間に強力な宇宙軍事力を手にして、ほとんど闘わずしてファウンデーションの支配する星系を併合していった。その勢いは止まらず、ターミナスを取り囲む4星系にまで迫った。一方のターミナスでは、内乱の危機が迫りつつあったが、この外圧の前にその勢いは消えていた。そして、セルダン記念日を迎え、ハリ・セルダンが予言を行うが、それは現状とはまったく関係ない言葉の羅列であった。明らかにセルダン危機であるのに、セルダンの計画は狂ったのか? その衝撃の内に、ターミナスはミュールに征服されてしまう。ミュールは、新帝国の創造主となるべく残る潜在的な危険である第二ファウンデーションの捜索に乗り出す。
 フランとベイタは、ターミナス、ヘイブンがミュールに征服される際に辛くもミュールの手を逃れファウンデーション一の心理学者エプリング・ミスとともに第二ファウンデーションを探し、ミュールに対抗するためにトランターに着いた。
 はたして、彼らはミュールより先に第二ファウンデーションを探し、ミュールの危機に対抗できるのだろうか? そして、セルダンの計画はミュールによって水泡に帰したのだろうか? はたまた、第二ファウンデーションはどこにあり、何をしているのだろうか?
 いよいよ謎が謎を呼び、物語は最高潮の元に、第三部へと続く。
 本シリーズなんといっても異色のミュールの登場である。このミュータントは、すごい超能力の持ち主だ。近くの人を心理操作するだけでなく、惑星規模、星系規模で心理的な影響を与えることができる力を持つ。その心理操作は恒久的なものであり、だからこそミュールには誰も勝てないのだ。
 強い、すごい、そして、超能力まで登場してしまったぞ、銀河帝国。どうするんだ!


(2006.3.18)





TEXT:丸目はる
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