はるの魂 丸目はるのSF論評


スカイラーク3号
SKYLARK THREE

E・E・スミス
1930


1930年にアメリカで発表されたスカイラークシリーズ第2弾。アメリカは世界恐慌の引き金となる大暴落を前年に招いていた。そして、現実の世界は第二次世界大戦に向かってゆっくり、ゆっくり進んでいた。科学界は、アインシュタインの相対性理論、ハイゼンベルグの量子力学、シュレディンガーの波動理論など、その後の世界をゆるがす発見や理論が発表されていた。
 アメリカは、いや、世界はいまだ男尊女卑であり、正義は力であり、平和であった。
 前作で完成したスカイラーク2号を使って再び緑色太陽系に向かうシートン夫婦、クライン夫婦の一行。途中、宇宙制覇を狙う人類型異星人のフェナクローン人と遭遇。その恐るべき企みと兵器を知り、シートンは、彼を大君主と仰ぐオスノーム人とウルヴァニア人との間の惑星間戦争を調停し、海惑星のダゾール人、知的な老成種族のノラルミン人を巻き込み、それまでのエーテル中を伝播する第四次光線ではなく、エーテルに依存しない第五次光線の操作装置を開発。さらに、彼らの手を借り、超巨大なスカイラーク3号を完成させた。そして、緑色惑星の政治指導者達とシートンとの「平和会議」で、宇宙平和軍を組織した。フェナクローン帝国への宣戦布告が行われ、そして一方的な惑星系壊滅戦がはじまった。
 フェナクローンの惑星は完全に破壊され、フェナクローンの「延期党」と呼ばれる、宇宙征服の準備を慎重にすべきだという勢力の宇宙船だけが逃げ出した。シートン一行とスカイラーク3号は、彼らを宇宙の果てまで追いかける。そして、20万光年先の手地と星間戦争を行い、ついにはフェナクローン人を絶滅に追いやった。
 宇宙征服の陰謀は潰え、宇宙平和軍により宇宙の平和は保たれたのだ。

 悪はひとりも残すべからず、である。

 さて、この巻では、シートンの宿敵デュケーヌ博士はあまり華々しくなく、シートンの自動尾行から逃げ出し、オスノームの宇宙船を盗み、フェナクローン人を捕虜にして姿を消してしまう。

 たったひとりの悪役よりも、宇宙の平和なのであった…。


(2006.2.19)





TEXT:丸目はる
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