はるの魂 丸目はるのSF論評


宇宙のランデヴー2

RAMA2

アーサー・C・クラーク&ジェントリー・リー
1989


 1973年に発表された「宇宙のランデヴー」の続編である。本書は、ジェントリー・リーとの合作により生まれた作品で、「2061」の後に発表されている。80年代後半から90年代前半にかけて、クラークは、スリランカの地から世界を眺めつつ、やり残した仕事に手を付けている。
 本書の位置づけは難しい。前作、「宇宙のランデヴー」が名作であったが故に、本作品は、ファンの期待と不安を持って迎えられたことだろう。私自身も、今日まで本書を読まずに来ているし、いまだこの続編である「3」「4」はわが家の本棚に並んでいない。もっとも、「3」「4」は近日入手して読むつもりではある。
 さて、3つを基本単位にするらしい異星人の手による小惑星宇宙船が太陽系内に入り、そして通り過ぎていくわずかな時間、1隻の軍事宇宙船が唯一その小惑星宇宙船に乗り込むことができ、ささやかな調査をとげることとなった。それが前作である。ラーマと名付けられた小惑星の中に、異星人はいなかったが、バイオボットと後に名付けられる有機ロボットがおり、荘厳な都市のような構造物が中空の宇宙船にはあった。
 本書はそれから70年後を舞台にする。ラーマ人が3を基本単位にする以上、同じような小惑星宇宙船は3つあるかも知れない。そう考えた地球では、太陽系外を探査して早期に警戒するシステムを作り上げたものの、その後の経済変動と社会変動によって地球は大混乱と混迷の時代を迎えてしまう。はじまった宇宙時代は、地球社会の変動により、縮小を迫られたが、ようやく最近になって再び宇宙時代を迎えていた。そんなとき、忘れ去られていたふたつめのラーマが本当に到来しつつあることが判明した。今度こそ、きちんとした調査をしたいと考えた地球人たち。軍の考え、科学者の考え、宗教家の考え、社会のあり方を背景にしながら、ふたつめのラーマの調査がはじまる。
 というのが今回の筋立てである。
 前回は、小惑星宇宙船という壮大な人工構造物のふるまいと景観を読者に提示するのが目的のような作品であり、そのねらいはまさにあたって、SF界にひとつの古典を生みだした。
 それに対し、今回は、普通のSFである。くせのある登場人物とその社会背景、サスペンス仕立ての展開、ラブロマンス、殺人、事故…。ラーマを舞台に、人間社会の縮図が展開される。それはそれでおもしろいので、ラーマを舞台にした派生的ストーリーとして読めば楽しい。
 また、上巻の前半には、ラーマ1が2130年代に来てから2200年代に入るまでの70年間の科学、経済、社会、宗教の変化を概観していて、その部分は、近未来予測として楽しく読むことができる。
 もっとも、この近未来予測の必要性は、ラーマ2が太陽系に入ったとき、前作のラーマ1とは極端に科学的背景が変わっていないようにするための工夫とも読めるので、クラークらが、本当にこういう予測をしているということではないだろう。ともあれ、経済変動により、社会が本当に大きな打撃を受け、変革し、再生するというのは、現代的にも身につまされるところがあり、読みがいがある。考えてみると、80年代後半は、こういう近未来予測がさかんであったので、本書の導入部分は、発表当時からみて違和感なく受け入れられたのであろう。この部分は特におすすめ。
 さて、「3」「4」ではどうなるのだろうか。ラーマ人には会えるのか、3つめのラーマは地球に来るのか。そして、ラーマ2と運命をともにした人たちのその後はどうなるのか、この3部作のできばえはどうだったのか。そのあたりを楽しみにしておきたい。

(2005.5.22)





TEXT:丸目はる
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