はるの魂 丸目はるのSF論評


時の罠

THE TIME TRAP

キース・ローマー
1970


 スラップスティックSFって好きだなあ。どたばたSF。
 言葉遊びと大胆な設定で、主人公を走り回らせ、混乱させ、そして、最後には大団円が待っている。安心して、何も考えずに、楽しく読める作品である。とりわけ、キース・ローマーは言葉遊びがおもしろい。原題も、TTTだし。

 なぜか知らないが、ある空間・時間が一定範囲・24時間で固定されてしまった。家を出て、まっすぐ歩いていくと、家の裏に着いてしまう。朝ごはんを食べ、昼も、夜も食べ、寝て、起きると、食べたはずの食材が元に戻っている。殺されても、夜を超えると、生き返ってしまう。
 時の罠にとらえられてしまった人たち。
 同じ状況が、人類以前の歴史から、遠い未来までで起こっている。
 しかし、時の罠には割れ目があった。1970年代に生きる主人公ロジャー・タイソンは、2249年の未来から割れ目を抜けて来た女性ク・ネルを事故死させてしまい、その死の直前に彼女と接触したことで、割れ目の存在を知り、さまざまな時代を旅していく。そして、時の罠の存在を知り、時の罠をしかけた高次元人の存在に気がつくのであった。

 タイムパラドックスなど知ったことではない、こちらは、高次元的存在である。時間の外の世界である。なんでも起こるのである。
 なぜ、時の罠はあるのか? 博物館なのか? 実験なのか? はたまた…。

 奇想天外な設定、奇想天外な解決。
 思わず大きな声で、「これでいいのだあ」と叫びたくなる。

 ちなみに、2019年には強制的統一というものがあり、世界は一変するらしい。ク・ネルやス・ラントなど、名前も「未来っぽい」し、言葉も全然今の言語とはかけはなれた「未来語」になるらしい。
「謎の転校生」みたいな未来人のイメージがある。もうすぐだ、楽しみだなあ。

 そうそう、あまり日本のSFについて書かないが、ほどほどには読んでいる。私は横田順弥や火浦功をこの分野に入れたいのだが、まあ異論はあろう。

(2005.1.24)



TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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