はるの魂 丸目はるのSF論評


リングワールド

RINGWORLD

ラリイ・ニーヴン
1970


 今読んでも傑作である。

 ルイス・ウー200歳。冒険家。話から読みとると、時は28世紀、かな? 地球上で移動手段としての転移ボックスができて3世紀半になる。人類は、肉食の虎型異星人クジン人と出会い、星間戦争がはじまった。アウトサイダー人が、人類の星のひとつウイ・メイド・イット星に漂着し、ハイパードライブ装置を彼らにもたらすことで、クジン人との戦争に勝ち、その後、植物食の蹄を持つ二頭型異星人パペッティア人に出会い、他の異星人とも出会うこととなった。
 パペッティア人ネサスの誘いで、ルイス・ウーは、クジン人スピーカー・トウ・アニマル(獣への話し手)、20歳の地球人ティーラ・ブラウンとともに、不思議な星系リングワールドへの冒険旅行に出かける。
 リングワールド−地球の公転軌道を考えて欲しい。太陽を回る地球が描く線のことだ。この線が幅160万kmのリボンだとする。ちなみに、地球をぐるっと一周回ると4万kmだ。
 このリボンの太陽を向いた面の面積は地球の表面積の300万倍。つまり、300万個の惑星が同じ軌道上を一緒に回っていると考えればよい。陸続きの地球より300万倍の平たい世界がそこにある。地球の各地を1年で探検したり旅行するとして、どのくらい見て回ることができるだろう。それが300万倍である。3000000年かけても、ざあっとしかこの世界を知ることができないのだ。想像つきますか?
 そして、そこから見上げる空の光景…。
 たとえ、地球の人口許容量が100億人であっても、リングワールドならばその300万倍の許容量となるのだ。それがひとつの世界なんて。
 SFのおもしろさは、見たこともない世界を見ることだ。旅をしても、旅をしても、旅をしても、いきつけないリングの端。そして、リングには終わりはない。
 誰がつくったのか? どうして、放棄したのか?
 そんなことさえも、どうでもよくなってしまうほどに不思議で巨大な人工の世界。
 4人は、リングワールドに到着し、そして、不時着する。
 幸運を運命づけられた女性ティーラ・ブラウンとともに…。
 典型的な珍道中記であり、4人の性格、関係性、関わりが、物語に奥行きと楽しさと深みと、擬似的な体験を与える。
 ロードストーリーとしての「リングワールド」の展開は、その後、ダン・シモンズの「ハイペリオン」シリーズにも色濃く反映している。同じようなおもしろさが得られるだろう。「ハイペリオン」を読んで気に入った人は、ぜひ、「リングワールド」も読んでみて欲しい。
 今読んでも、そして、同じ宇宙を描いたノウンスペース・シリーズの他の作品を知らなくても、本書は、SFの傑作であり、色あせることはない。



(2004.10.26)




TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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